ひすいたちがそのぬくもりを感じていると、障子が急に開いた。



がたっ、とした音に驚いてそれぞれが離した。




そこに立つのは暗闇でよく見えないが、男であることは何となくわかった。




しかし、男であるには華奢な肩幅で、彼が小十郎でも豆吉でもない気がした。




その消去法で、ひとりのある男が浮かぶが、ここにいるはずがないとかぶりを振る。




―――――…もしそうならば、厄介なことになる。




ひすいは冷汗をかき、男の声を待った。




男は何も言わずに一歩部屋に入ると後ろ手で障子を閉めた。




暗明かりの中、おぼろげに見えるその輪郭を覚えている自分が苛立たしくて唇を噛み締める。





「………心配して来てみたら、やっぱりこうなっていたか。あれほど念を入れろと忠告したのに、あの人は失敗してしまったんだね」




「てめぇ……!」





忘れるはずがない。



あの辱めは今も首筋に残っている。




「しかも、何だよこの状況は。君も僕の忠告を無視したみたいだね。この大名は君を弄んでいるだけさ。その口付けだって、僕のとは似て非なるものであったろう?」




男は不気味に笑った。