「心、心」
「ん~、何?ママ。今日土曜だよ。もっと…寝させてよ」
「電話よ」
「誰から?」
「上原って先生よ」
「っ!…わかった。受話器かして」
「はい。じゃぁママ下にいるから」
『吉池』
「……」
『今日、審査日だぞ。なにしてんだ』
「あたしの作品、出せなかったでしょう?」
『いいから制服着て会場に来い』

ツーツー

「なんなの…?」
あたしは仕方なく制服を着て会場へ。
先生と、会いたくないのに…。
会場に着き、入り口を入ってすぐのところに先生がいた。
壁には作品が飾ってある。
『来い』
先生はあたしの腕を掴み、歩き始めた。
「ちょ、先生!は、離して!」
こんなこと、されたくない…。

いきなり止まった先生。
『吉池、あれみろ』
「?……っ!」
先生が指差した作品は…。
あたしが書いた、先生の寝顔の絵。
「な、んで」
『吉池が帰った後、美術室の絵を描いたキャンパスを取ったら、コレが出てきたんだよ』
「……」
こっそり描いた絵が、ばれた。
恥ずかしい…。
『吉池、あの絵の上、見てみ』
あたしは絵の上を見てみる。
そこには……
“優勝”
という文字。
「え………」
『賞状とトロフィーは、学校に届くそうだ』
「そう、ですか」
『行くぞ』
「え?」
先生はまたあたしの腕を掴み、歩き始めた。