「そんな落ち込まないで大丈夫だって!ほんとにキスするわけじゃないんだから」

「うん…」

キスをするふりだと、逞くんは言っていた。


だけど…やっぱりイヤだよね。

するふりでも、絶対ショック受けちゃいそうだもん。


「ほら暗い顔しない!せっかく浴衣着ておめかししてるんだから」

亜紀ちゃんはそう言うとニコッと笑った。


「うん…そうだよね。亜紀ちゃんも浴衣似合ってるよ。なんか、みんな揃って浴衣っていいよね」

「ねー。逞とさゆもめっちゃ浴衣似合ってるし。さすがアイドル何でも着こなすねぇ」


ほんと、二人ともばっちり決まっている。

この前と同じように、変装のため逞くんはサングラス、沙弓ちゃんは伊達眼鏡をかけていた。


「さゆっ、綿あめ買ってきた!」

「逞っ!あんま勝手にうろちょろしないで」

頬を膨らます沙弓ちゃんに、ごめんと笑顔で謝る逞くん。


逞くんは自然と沙弓ちゃんの手を引き歩き出す。

そんな二人の姿を、私は羨ましく見つめていた。


「ラブラブだねー」

逞くんと沙弓ちゃんを見つめながら亜紀ちゃんがそう言うと、

「亜紀も綿あめ食べる?」

と、洋祐くん。


「うん!食べたーい!」

笑顔で答えると、洋祐くんは亜紀ちゃんの手を引き歩き出す。


亜紀ちゃんと洋祐くんもラブラブじゃん。

いいな…。


そんなことを思っていると…

「ふんっ。相変わらずバカップルね。人前でイチャイチャを見せつけないでほしいわ。ねえ、ゆうにゃん」

百合香ちゃんが不機嫌な声で言う。
おまけに舌打ちまでして。


「…あ、あはは。そうだね」

イチャイチャってわけでもない気がするけど…。

でも、やっぱり羨ましいな。

なんだかちょっぴり寂しい気分…。


そして…