「はぁ…別に構いませんが。」

「じゃなくて。下の名前で呼んでもいいかな?」

「下の名前…?」

「『凜』って呼びたいなって話なんだけど。」

「…っ…。」


ポッと赤くなるその頬が可愛い。
制服でおさげ髪に生傷という有り得ないものの組み合わせだけど、そんなちぐはぐさも可愛く見える。


「ダメかな?」

「…構いません。好きにして下さい。」

「じゃあ凜ちゃん。」

「…ちゃんはいりません。」

「じゃー…凜。」

「…何ですか?」

「呼んでみただけー。」

「…帰りますっ!」

「あ、待って。」


俺は彼女の腕を掴んだ。
彼女は振り払わずに、黙って俺に腕を掴まれている。


「…何ですか?」