「きゃあっ!」


彼女の悲鳴と共に、軽い彼女の身体がぐらっと押される。
バランスを崩し、竜の背からするりと落ちる。


「…っ…大島さんっ!」


俺は落ちていく彼女の身体を追いかけ、自ら竜の背を離れた。
…こんなに高いところから落ちる感覚なんて一生味わうことはないだろう。


「凛っ!」

「凛ちゃん!」

「突風にやられたんだ…。」

「颯!」

「あのバカ何やってんだよ!」

「フライ間に合わないよー!」


彼らの声が聞こえる中で、俺は彼女の腕を捕まえた。
そのままぐっと引っ張って抱え込む。


細い身体を抱きしめた。


死ぬかもしれない。ていうか死ぬだろう。
本の中で死んだらどうなるんだ?現実世界に帰れるのか?
そんなことを考えつつも、俺は一つの言葉を口にした。


「…ありがとな。
君たちのおかげですっげー楽しかった。」

「…私もです。すごく楽しい旅でした。」


彼女の声が微かに聞こえた気がしたと思ったけれど、はっきりと確信は持てなかった。
…俺の意識は確実にどんどん薄れていった。