「すごいすごいすごーい!こーんな風を全身に受けるなんて生まれて初めてーっ!」

「桃依…はしゃぎすぎだよ。確かにこんなに空を近くに感じたことはないけどさ。」


「…高いな。」

「そりゃあ竜に乗っちゃってるし。紫紀って高所恐怖症だっけ?」

「そういうわけじゃない。ただこんなに高い場所まで来たことは未だかつてない。」

「僕もだよ。」


「…うわぁ…どこまでも行けそう…。」

「なんだよその能天気な感想は。」

「はぁー?じゃあ蒼刃はどう思ったの?」

「竜使いこなせるようになったら最強だよなーとか?」

「サイッテー!」

「なんでだよ!?」


別の竜の背で繰り広げられる『本の中』のキャラクターたちの会話。
本を読めばリアルに感じられる彼らを、こんなにも『身近』に感じることなどあっただろうか?
彼らは本の中を『生きている』。
それは確かで、その本の中で同じ時間を俺たちは生きた。


「不思議だよなぁ…。」

「何がです?」

「ここにいることも、こうしていることも、彼らに出会ったことも。
夢みたいだけど夢じゃない。感覚として確かにある。」

「…そう…ですね。」


彼女がそう頷いた瞬間。
突風が前の方から俺たちを襲った。