「小澤さん…何を…?」

「大丈夫だから。」


水竜が一度瞬きをした。
これを許可だと信じ、俺は一歩ずつ水竜に近付く。


そしてその水色の肌に触れた。
子どもの水竜よりも固く、強い。そんな印象。


「はじめまして。水竜の子どもを返しに来ました。」


…どうにも触れていないと伝わらない、伝わってこない気がして、俺は言葉を続ける。


「俺たちは水竜に危害を加えたりしません。安心して下さい。」

『…そなた、名は?』

「え…?」

『我々と話せる人間には初めてお目にかかる。
だから名を知りたい。名を何という?』

「颯…と言います。」

『颯…良い名だ。」

「くぅん…きゅー…。」


水竜の子どもが鳴いた。
それに反応して、別の水竜が近付いてくる。


『あれが母親だ。』

「そうなんですか?」


水竜の子どもは母親の元へとよろよろしながらも辿り着く。
母親の肌にぴったりとくっつく姿はとても微笑ましい。
人間の親子となんら変わりはない。