「きゃあっ!」

「星来!」


水竜の入った籠を持とうとした星来のそばに炎が当たって小さく爆発する。


「星来、大丈夫か?」

「紫紀さんっ…あたしは平気ですっ…緑志のシールドがあったから…。」

「ならいい。」

「でも…水竜の籠が…。」

「どこだ?」

「手、届く前に爆発したからどこに行ったのか…。」


…俺には見えていた。
コロコロと転がる籠が。
あの中に、水竜の子どもがいる。眠ったままの、小さな子どもが。
そう思うと身体中の力が足に回る。
俺は全速力で走り出した。


「颯さんっ!」

「颯!無茶は…。」


星来と紫紀の声が正常に耳に届くくらいには落ち着いていたし、冷静でもあった。
転がる籠に手をあて、その動きを止める。


中を開けて確認すると、ただならぬ振動に目を覚ましたらしい水竜が不安げに俺を見上げていた。


「…もう大丈夫。痛かった?」


俺は水竜の頭を撫でた。
…初めて触れる感触だった。柔らかいとも固いとも言えない弾力。
ただ、触れた部分から徐々に水竜が落ち着きを取り戻していくのが分かって、それに何故かホッとした自分がいた。