目の前に広がる世界。


それは間違いなく『異世界』。


乾いた土、ごつごつした地面の上が今、自分のいる場所で。


眼下には森、そして街が広がっている。
もちろん現代的要素なんて皆無だ。
どこかの物語に出てきそうな古風さまで兼ね備えている。


「…君、大島さん、だよね?」

「はい。よく名前知ってますね。」

「それ言っちゃお互い様でしょ。
それで大島さん、君は分かる…?ここがどこか…。」

「分かりません。」

「だよねぇ…。」

「でも推測なら。」

「聞かせて。」


彼女は一瞬言葉に迷ったようだが、迷いを振り切るかのように口を開いた。





「本の中、です。」

「本の中ぁ~!?」



生真面目そうな顔をした彼女の口から出た、あまりにもキテレツな言葉に俺はただ、目をぱちくりさせるだけだった。