そうだ、アイツもいたんだった。 急にアイツの存在を思い出して、恥ずかしさがこみ上げる胸の奥。 こんな姿をアイツに見られてしまった恥ずかしさが、より一層あたしの心を空騒ぎさせる。 『…っ、ちょ…!』 ―…それでも、アイツに握られた手のひらは、あったかくて。 あたしに有無を言わせずに走り出したアイツの背中が、すごく頼もしく見えたんだ。 見えなくなった、先輩の顔。 アイツに連れさらわれたあたしを見て、先輩がどう思ったか知ることはない。