わかってるくせに。 わかってるからこそ、颯は余裕を見せながら笑っていて。 大して鋭くもない睨みを利かせるあたしに、こう呟いたんだ。 「――俺は、みぃちゃんに会いたかったよ。」 ―…教室じゅうが、ため息のような歓声で渦巻いた。 いつの間にかあたしは、颯に肩をふわりと、抱き寄せられていたから。 『……っ』 染まる頬。 ざわめく観客。 颯のワイシャツの第2ボタンが、あたしのおでこのすぐ側にあった。