陶冶が亡くなったのは、金曜日の夜だった。彼は、自分の部屋で首を吊り、死んでいた。遺書には、青い鳥はいなかったと、一言だけ綴られていた。

私は、一人、彼の亡き骸の前に座っていた。

「陶冶、青い鳥はまた逃げちゃった」

深い悲しみが、私の中で生まれた。

「でもね、もう見つかったんだ。青い鳥。私の心の中にいたんだ」

涙が止まらなかった。

「愛だよ、私は陶冶を愛している」

私は涙を拭いた。

「あなたが教えてくれたことは、私の中に残っているよ」

愛は砂のお城。

「もう、壊さないよ。お城はもう壊さない。だから、目を覚ましてよ」

私は陶冶の体に触れた。





砂のお城はもう、跡形も無くなっていく。

それでも人は作り続ける。

永遠に崩れない愛のお城を。