あたしは教室の後ろ、森本さんの席がある場所に目を向けたが、当然ながらその席には誰も座っていない。
森本さんの欠席の理由が気になる。
やっぱり森本さんはストーカー犯の協力者で、あのシールを見て怖くなった…?
今日の教室内は相変わらずまとまりなく騒がしかったけれど、誰も昨日のシールのことを気にも留めてない様子。きっとA組の仕業だと言うことにまとまってるんだろう。と言うことは、やっぱり森本さんだけがシールの意味を知ってるってこと?
色々な想像が横行して、でも結局出席してないひとのこと探るのは不可能だ。
あれこれ考えるのはやめよう。
もし森本さんが協力者だったら、少なからず近々何かしらのアクションは起こすだろう。その“近々”って言うのがいつになるのか分からないけれど、そんなに掛からない筈。
そう考えて、3時限目を終えたときだった。3時限目まで特に何も起こらなかった。
森本さんは現れず、だけど時間だけは淡々と過ぎて行く。
途中、岩田さんがにこにこ笑顔で
「鬼頭さん、見て!ジャーン!昨日立ち読みしたレシピ本で再現してみたんだ~」と言って見せられた写メはリンゴのタルトに生クリームが乗っていた。その再現はかなり高レベルで
「凄い」素直な感想を述べると
「ホント!?使えるかな」と岩田さんが勢い込んできて
「うん、凄くいいと思う」と言うと岩田さんはさらに機嫌を良くしたようだ。
「見て!ストラップも早速付けたの♪」とあたしとお揃いの薔薇のストラップを見せてくれて
「あ、あたしも付けてる」と言ってケータイを翳すと
「嬉し~」と岩田さんは上機嫌。
あたしの背後で乃亜が「むー」と面白くなさそうに唸っていて、岩田さんが他の女子に呼ばれて行っちゃったあと、「あたしも雅とお揃いしたい」て子供みたいなことを言い出し、ちょっと笑った。
「俺もー」と一連の会話を聞いていた梶も便乗して
「俺も……と言いたいところだけど…あれ?エルモのストラップが無くなってる」と久米はスマホをふらふらさせて、でも確かに顔色悪いエルモは消えていた。
「あんたのことだからまたどっかに忘れてきたんじゃない?」あたしが気のない素振りで言うと
「うーん…さっきまであった気がするんだけど。体育の授業の前までは」
「どっか落としたんじゃねぇの?」と梶もあまり興味がなさそう。
まぁあの目立つ色のエルモならどっかに落ちてても、きっと誰かの目に留まるでしょ。って楽観的なことを思っていると
「でもストラップてそんな簡単に外れるもの?だって久米くんのケータイのストラップホールからきれいに無くなってるじゃん」と乃亜が首を傾げ、確かにストラップホールから不自然に切られた、とかそんな感じには見えない。あたしはストラップとかつけないからあんまり分かんないけど、でもあれって結構キツく絞まってる感じだし。抜けた…?とは思えない。
久米のストラップ……あの顔色悪いエルモの行方が気になったけれど
『神代先生、至急校長室に来てください』
と、事務員の無機質な声を聞いて、その考えは断ち切られた。
水月―――……?
何で校長室。
嫌な予感がしてあたしの額に嫌な汗が浮かんだ。



