2月――。 春の訪れはまだ遠く、落ち始めた夕日の空が、夜のとばりに包まれるのは、驚くほど早い。 凍えるような空気が肌を刺し、過ぎ行く今日を惜しむ太陽の残照が、闇に抱かれようとしている人気の無い校舎を、朱に染めている。 そんな中。 コツコツコツ。 コツコツコツン――。 灯りの落ちた暗い校舎の2階の廊下に、頼りなげな足音が響き渡った。