【短編涼話】 十物語

サァアアアアア―――

「気持ちいい風ね。」

夜風に乗ってサラサラの髪が鼻腔をくすぐる。

自分の隣に女神がいる。

圭は喜びを噛締めながら笑った。

「ねぇ美月。・・桜の神様って信じるか?」

「なぁに、それ。」

「いーや、なんでもないよ。」

圭はちらりと旧校舎を振り返った。

由宇に「桜の神」のことを吹き込んだのは自分。

”二人分の命”で美月が手に入った。

圭は夜風に乗った草の匂いを嗅いだ。

もうすぐ、桜の季節も終わる・・。