一時間ちょっとの収録が終わった。

「よかったわよ、今日の収録。」

この人はマネージャーの桜田さん。

「ありがとうございます。すごく楽しかった。」

「あ、このあと入ってた雑誌の取材がキャンセルになったのよ。今日はもう帰る??」

「それじゃあ、歌の練習して帰ります。その方が、余計なこと考えなくて済むし。」

「あい・・・」

「そうよ、私に過去なんていらないの。未来があるなら、それでいいのよ。」

「・・・そうね。もうすぐ事故から一年だわ」

一年・・・私にとっては人生の全てみたいなもの。
一年前、気がつくと私は病院のベットの上だった。どうしてそこにいるのか、考えても何も思い出せない。自分の名前すらもわからなかった。その後、両親は事故で死んだ、私もその事故で記憶を失ったんだと聞かされた。
それから私は誰とも口をきかなくなった。
そんな私がしばらくの病院生活で唯一私が興味を示したもの。それは、TVだった。その中で繰り広げられるドラマや、きれいなメロディの歌。

「あいちゃんも、こんな風になりたくない??」

母の姉の泉さんという人が私を見て、そう言った。

「なりたい。」

即答だった。