「岡本(おかもと)聡美(さとみ)さんって人なんだけど・・・」
「綺麗な人ですね」
寿恵は心なしにそう呟く。心にあったのは、仕事のことについてだけだ。
白い肌で、目は小さくも睫毛がとても長く、ロングヘアーの黒髪。マダムな一雰囲気がついた40代後半の女性だ。
「彼女は、私の母なんです」
「言えそうですね。40代くらいなら」
寿恵よりも2つ年下の20歳の弘前は、母だと言う「岡本 聡美」の写真を突き出したまま続ける。
「私は3歳の時に施設に預けられて、それっきり母とは会ってなくて、やっと最近DNAで調べてもらって、結果が出たんですよ。この人が、本当の母さんだって」
「お母さんの顔は、覚えて無かったんですか?」
「だって、3歳ですよ。そんな昔の事、覚えられませんよ。・・・唯一、母がくれたペアリングだけが、昔からずっと残ってるんです」
残るものがあって、何故気付かれないのだろう、と寿恵は不思議に思う。
「で、その人にちゃんと、親子として面会したい、と」
「はい」
十分な決意がある声だった。
そう、その目が見たかったんだ、と寿恵は舌なめずりをしそうになる。