「どうだ、空。見えているか?」
顔を覗き込まれた気がしたから、「見えてませんよ」体を引きつつ返答。
視界が遮断された途端、全神経が聴覚に向けられる気がした。
触覚も若干、使われている気がする。
あ、今、車内灯が点いた。
音で分かったし、先輩の動く気配も感じられたし、やっぱ視界の明暗は分かるっぽい。
瞼やハンカチで視界を覆っても、分かるもんは分かるんだな。
って、なんで車内灯を点けるんっすか!
け、消して下さいよっ、ただでさえ小っ恥ずかしいことしてるんっすから!
外から車内が見えたりするかもしれないじゃないっすかっ…て、まさか、最初からこれを狙ってっ…、だったら、とんだ性悪攻め女っすよ!
ふと気配が動いた。反射的に俺は伸びてきた手を掴む。
「むっ」不機嫌な声が鼓膜を波打たせる。
本当は見えているのではないか、べしべしと空いた手で俺の頭を叩いてくる先輩はムードが台無しだろうと猛抗議。
アイタッ、アイタッ、そんなこと言われてもっ、分かっちまうもんはしょーがないでしょ!
視覚が奪われている分、他の神経が総動員してるもんだからっ、嫌でも分かっちまうんっすよ!
「こういう場合、視覚を奪われたあんたはオロオロとあたしに翻弄されるものだろう! 文庫化になっているケータイ小説もそういうシチュエーションだったぞ!
なのに何故、糸も容易く動きを読むのだ。目隠しプレイを舐めているのか!」
「りっ、理不尽な怒りを向けないで下さい! 羞恥を呑んで目隠しをしているだけでも、俺、超偉いと思いますっす!」
「なにを言う。これは仕置きだぞ。偉いもなにもあるか!
ええい、何か縛るものはないか。抵抗は燃えるが、今は狼狽している空を翻弄したい気分なのだ!」
ぶ、物騒なことを仰るお嬢様一匹警戒注意報! 警戒注意報! 警戒注意報!
目隠しに加えて拘束プレイとか、どんだけヤらしいことをシたいんっすかっ!
縛られるなんてぜぇってヤだぞ!
ナニされるか分かったもんじゃないっ!



