ふふふふっ、ふふふふっ、不気味な笑声を漏らし、ニコッと笑顔を向ける。
相手に効いていないのは百も承知だ。
まったく、紳士なようで腹黒さは天下一品だな。
見せる奴にしか見せないのがまたタチの悪い。
勝手にポテトを奪っていく玲に対し、片眉をつり上げるあたしのことなどお構いなしだ。
こんなことなら落ち込んだままの方がマシだった。
しおらしい玲の方がからかい甲斐があるというものだ。
憮然と息をつき、「まあ冗談抜きで」元気そうで良かったじゃないか。あたしは話題を切り出した。
まだ引き摺ってはいるけれどね。
彼女の苦笑いに、そうだろうな、あたしは相槌を打つ。
元気になれと無慈悲なことは言わんよ。
あんたのペースで立ち直るのが一番なのだから。
「再契約の件、君は何も言わないんだね」
やや遠慮を見せる玲に、「婚約した時から空はあんたを選んでいた」再契約したと聞いても驚きやしない。
寧ろ、あれだけ玲に支えてもらったのだ。
傷心を抱いている玲をあいつが冷たく切り捨てるようなら異性として幻滅してしまうぞ。
空の選択は間違っていない。
あいつはあいつの進みたい道を選んだ。ただそれだけなのだから。
……嫉妬しないといえば嘘になるが。
けれど、もし自分がそうなったら。
仮に大雅が玲のような目に遭っていたら、婚約を継続していただろう。
傍に居たい、守りたいの一心で。
正直、あいつはあたしにとって空よりも大切な男なんだ。
だってあいつは挫折しまくっていたあたしを支え、背中を蹴っ飛ばしてきた。
好意は別として、大切の比重は大雅の方が大きい。
それだけ大雅には恩義がある。
「あたしが三ヶ月以内に婚約を破棄できたら勝負してくれるといったのはあんただ。当然、勝負はしてもらうぞ。死ぬ気で環境を変えたのだから、これくらいはお付き合い願いたい」
「仮のくせに生意気だね」
「煩い。あんただって三ヶ月以内に空を落とせたわけじゃないだろう? あたしはあんたに勝った気も、負けた気もないぞ。空にとってあんたは傍に居たい人間として位置づけられているが、あたしにとってはそれだけだ」
嫌味を吐けば、本当に生意気だと玲が呆れ顔を作った。
しかしすぐに表情を崩し、「そうだね」勝負という勝負は結局ついていない、
途中で水を差す事件もあったし。
そう言うと、ナゲットボックスから1ピースそれを取り出してソースに浸した。