前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―




「空! 見舞い品だ。有難く受け取れ!」


ヤーな予感がした。

おずおず受け取り、中身を開けばあらびっくり。

さっき飲んだイチゴミルクオレが俺を見上げているじゃあーりませんか。

しかも七つ、だと?
二つ消費したばっかりなのに、また五つ増えたよ! キリがねぇや!


あ、しかも。


「せ、先輩。この文庫。まさか!」


震える手で文庫を取り、各々表紙を確認。


『プリンス*プリンス ~俺様教師の甘い罠~』

『君とレッスン ~まずはキスからでしょ!~』

『意地悪な隣人 ~そんな君は幼馴染~』


で、で、で、出たぁあああああ! ケータイ小説っ! おぞましい悪魔本!

これを俺にどうしろと言うんっすか。


今、暇潰しがてらに以前から先輩に貰っていたケータイ小説を読んでいたというのにっ……、また増えた! 貰った小説、半分も読んでねぇのに!


「少しでも空が元気になるように取り揃えたんだ。どれも新刊だぞ!」


嬉しくねぇよい先輩! 俺はすこぶる落ち込みました!

ズーンと頭上に雨雲を作りつつ、

「先輩ありがとうございます」

大切に読みますから、と言葉を添えた。

気持ちは受け取っておくべきだよな、気持ちは。
 

「喜んでもらえてなによりだ。それを読んで少しでもえろい男になれよ」


グッと親指を立ててウィンクしてくるあたし様にチョップをかましたくなった俺は心の狭い男だろうか?


人知れずこめかみに青筋を立てていると、「これも返しておくぞ」あたし様が一枚の写真を差し出してきた。

それは俺と生みの親と写った古い写真。俺の宝物だ。

裏を返せばSOSのメッセージが記されている。


目尻を下げ、「持っててくれたんっすね」ありがとうございますと感謝を述べた。


「あんたが安易に捨てるわけないからな」


もう捨てるなよ、しっかりと釘を刺してくる。

うん、もう捨てないよ。
写真とはいえこれは俺の大切な繋がりだから。


「これを持っていると不思議とあんたのピンチを察することができた。ご両親の導きだったのかもしれんな」


そういってくれると嬉しい。
まるで此処に死んだ両親がいる気がするから。
 
 

「空。大雅との婚約が解消された。まあ、仮だが」



と、彼女が話題を切り出してくる。

それは大雅先輩から聞きました、とKYなことは言わない。

嬉しそうに報告してくれる彼女の笑顔を曇らせたくなかったから。
 
「おめでとうございます」

頬を崩しつつ、新しいイチゴミルクオレを彼女に差し出す。

「空とおんなじになったな」

受け取ってくれた先輩が誇らしげに笑った。


死ぬ気に努力した結果を形に残してみせた。空とおんなじだ。彼女は意気揚々と伝えてくる。

俺はかぶりを振った。

俺と先輩の努力の形は違う。
きっと俺の努力とは比べ物にならないほど、彼女は努力したのだと思う。


だからおんなじじゃないよ、先輩。

 
「やっとスタートラインに立てた。これからだ。玲をこの手で握りつぶす! あんの腹黒女を打ち負かす時が来たのだ!」

「は、腹黒って」

「むっ。空は玲の腹黒さを見たことないのか? あいつの腹は煤だらけだぞ」


確かに御堂先輩ってちょっち腹黒いところがあるよな。

じゃないと、あーんな意地悪やこーんな意地悪しないし。
  

「いいか空。あたしが玲を打ち負かしたら、まずその夜にセックスだぞ。最近、ロープの縛り方を覚えたんだ。所謂緊縛プレイというやつだ! どうだ、勉強家だろ?」

「まったく自慢できることじゃないっすよ! 緊縛プレイってアータっ……」

 
「む? 薬の方が「そういう問題じゃないっす!」
 
「何故拒む。想像するだけで涎が「いかにも食って掛かりそうな目は禁止っす!」


「空、美味そうなヘソをしているな「ギャァアアアエッチィイイ!」