遠い遠い空の向こうから聞こえるサイレンの音。

住宅街で起こった事件事故ゆえ野次馬が集い始める中、俺達は暫しの間、身を震わせて抱擁しあう。



それは別れ以来の抱擁。今だけは許される、体温の共有だった。


懐かしいぬくもりを噛み締めながら、俺は目を閉じる。

きっと目を開けたら、また沢山のうそをつかないといけない現実が待っている。


なら、そのうそをつくために充電しよう。

体に染み付いているあたし様のぬくもりで、充電をしよう。
 
 


だって俺の最初の所有主は、この人だったのだから。





⇒Epilogue