怖くて仕方がないくせにさと子ちゃんは片意地張ってくる。
俺は怒声を上げ、
「余計なお世話なんだよ!」
遠まわしながらも絶交宣言をしたのにどうしてそこまで構うのだと憤った。
早く逃げろ、邪魔だ、鬱陶しい。
非道なことを言っても聞きやしない。
彼女は何度もかぶりを振って、
「今の空さまはうそつきです」
あんなに庇ってくれたくせに。
今更暴言を吐いても無駄な努力だと、泣きっ面のまましたり顔を作った。
「空さまは私と一緒に逃げて、あの家に帰るんですっ。玲お嬢様と私と三人で帰るんです。そしてお茶をするんですよ……、楽しいだろうな」
私はあの時間が大好きなのですよ。
失いたくない時間なのだと、彼女は濡れた瞳をそのままにあどけなく笑ってくる。
「空さまがっ、うそつきだってことは知っています。優しいうそばっかりっ……、つく人だってこと、知っていますから」
さと、子ちゃん。
「貴方の決意と覚悟を何も知らず、ただただ暴言を吐いてしまった。
空さまが私と接してくれた優しい日々は本物だったのに。
私はこれを乗り切ったら、一番に貴方様に謝るんです」
まだお友達でいて欲しいと願い、新しく出来たお友達の体育祭に一緒に行くのだ。
それだけではない。
地元を案内してもらったり、名所を教えてもらったり、舞台の役が貰えたらチケットを渡して自分の舞台を観に来てもらうのだ。
「だから」
さと子ちゃんはぽろぽろと大粒の涙を零しながら、
「私に助けられてくださいっ」
そして私と仲直りをしてやってくださいっ。貴方は私の一番最初のお友達っ、こんな形で失いたくないと炎のうねりを妨げるような大声音で伝えてきた。
焼け爛れそうな熱気を感じつつ、呆けていた俺はそっと表情を崩す。
こんな時に何をしているんだろう。
けれど伝えられずにはいられない。
うそつきの俺に真っ向から勝負をしてくる友人に、伝えられずにはいられない。
「さと子ちゃんには、もう、うそ……通じないか。参っちゃったな。じゃあ本音を言うしかないじゃないか。またさと子ちゃんや先輩とお茶をしたいってさ」
ごめん、そしてありがとうを相手に贈る。
「帰ろう」先輩と三人で帰ろう。これを乗り切ったら俺と仲直りしてやって。
真摯に想いを告げれば、「はい」一緒に帰りましょう。涙に濡れた瞳が和らぐ。
これにて一件落着、さと子ちゃんと俺の仲は修復されたのだった!
……と、なれば万々歳なのだけれど現実はまだまだハッピーエンドから遠い。



