三人がエレベーターを降り、目的の部屋に向かっているとゆらっと待ち構えていたように人影が目の前に現れた。
その人影に三人は足を止め、サッと身構える。
警戒心を募らせた眼で相手を確認、人影は玲にとって見覚えのありすぎる男だった。
「博紀」
眉根を寄せ、相手の身なりを満遍なく見渡す。
言いたいことは沢山あるのだが、まず開口一番に指摘したいことは身なりだった。
高値であろうスーツが真っ白、いや白にピンクがかった粉でデコレーションされている。
顔は払拭したあとがあるものの、髪は所々汚い。白い。粉っぽい。見事に無残な姿である。
その姿でホテルをうろついていたのか。よく不審者と間違われなかったな、つい皮肉を零してしまう。
舌を鳴らす博紀は禍々しいオーラを隠そうともせず、
「空さまにはヤラれましたよ」
あの人は本当に油断がならない。
いやすべてはあのクソガキせいか。
花畑がいなければこんな目には……ブツクサと文句を垂れている。
取り敢えず悲惨な目に遭ったことだけは理解できた。
「どうやら玲お嬢様も、なにやら馬鹿なことを起こそうとしているようで」
もし、会長に歯向かおうとしているのであれば大馬鹿者ですよ。
歯向かうことで何が起きるか。
意味深に笑ってくる彼の嫌味な眼、なにかを物語っているが一体……。
不安に駆られていると、
「玲ちゃーんだ」
ということは説得に成功したのかぁ。
能天気な声が空気を換えた。
顧みれば、自分達から来た方角からのらりくらりと二階堂楓、竹之内真衣がやって来る。
ヤッホーイと片手を挙げる兄の姿に大雅は早々溜息をついていた。
彼も兄には大層苦労しているようだ。
楓は飄々とした笑みを浮かべ、博紀に歩むと手首を取って「はいこれ」掌に物を落とした。
それはUSBメモリ。
空が鈴理に謝罪文を送った、あのUSBメモリである。
笑みを深めた楓は、「大層な物を仕込んでくれたね」高そうだから返しておくよ。ひらひらっと手を振って博紀から去る。
能面を作る目付けを余所に、楓は足先を第二控え室へ向けた。
目的地は皆、一緒でしょう? もう王将は目の前だと口角を持ち上げ、足を動かす。
彼の先導に続いて真衣、玲、大雅、鈴理が後に続く。
と、鈴理は足を止めて博紀の方を振り返った。
彼の悪意に満ちた眼を瞳に映し瞠目する。
嫌な予感が、大きな胸騒ぎがした。



