「先輩。ちゃんと食べて寝てます? 俺がいないからって好き嫌いしちゃ駄目っすよ。先輩、すーぐ残すでしょ? 夜更かしだってお手の物ですし」
「君は僕の母親かい? 口うるさいぞ」
ぶすくれる婚約者に、「いいから答えなさい」俺は問答無用で迫った。
やや間を置いてダイエットしているのだと御堂先輩が唇を尖らせる。
ま、この子ったら! お残しをしたのね!
「食べていないんっすね」
食べられる有難さを知りなさいといつもゆーとるのに。
むにゅっと右頬を抓んでやると、「豊福が悪いんだ」君が傍にいないから、注意してくれる人がいないのだと人のせいにしてくる彼女。
「人が注意しても残すでしょ?」
苦笑を零し、「ちゃんと食べるっすよ」何でも食べないと強い子になれないっす。オカン染みた台詞をおくった。
まばたきを繰り返し、「何でも食べられたら」男のように強くなれるのかな? 御堂先輩はじっと俺を見つめてきた。
「僕は男になりたかった」
久しく聞く台詞に俺はかぶりを横に振り、
「女性で良かったんっす」
でなければ俺達はこうして過ごすこともなかったのだから。相手にそっと微笑む。
ゆっくりと上体を起こす御堂先輩に勢いよく押され、俺は畳の上にごろんと寝転がった。
あちゃぱ、どんなに女性らしい格好をしても貴方はやっぱり攻め女を貫くんっすね。
相手を見上げると、「男だったら」もっと強くなれたのにね、泣き笑いを浮かべるお姫様がいた。
やっぱりこの人は王子だ。
この人自身がそれを望んでいるのだから。
「豊福。もしも僕が男装をやめると言ったら、君はどうする? らしくないと笑うかい?」
それこそ、らしくない質問だと笑声を返したい。
けれど俺は笑わず、相手の髪に右手を伸ばし、わっしゃわしゃと撫でてやった。
「今までどおりなんじゃないかと思います。
言ったでしょ。俺は貴方を“男”として見たことはない、と。
男装しようとしまいと根本的な見方は変わりませんよ。
男ポジションを譲ってくれるなら、俺、頑張っちゃいますけどね」
「ヤダ」子供のような返事をしてくる先輩は譲らない、誰にも譲らないと繰り返し、耳の裏にキスをしてきた。
「はいはい」
なら女ポジションで頑張りますよ。なるべく。
おどけを口にして、相手の首に腕を回す。
そのまま目を閉じ、彼女のぬくもりを感じた。
だって彼女が人の背中を掻き抱いてくるから。だから―――…。



