「イラスト付きの方が頭に入りやすいと思いまして」
お目付けとしての仕事を優秀にこなしてくれる博紀さん。恐れ入ったっす。
ショックを通り越して呆然とする俺に、「頑張って下さいね」ちゃんとお嬢様を愛するんですよ、と微笑まれた。
泣きたいっす。
俺の中のエスケープ魂が逃げたいと悲鳴をあげているっす。
どうしてこうなった?
グズッと半泣きになっていると博紀さんが時間までこの部屋で寛いでくださいね、と告げて退室する。
その際、「お嬢様も後で御出でになります」と教えてくれた。
「窓辺にお嬢様の私物が置いてあるそうです。ほら、あそこの白い紙袋がそうです」
うっかり見てしまわないようにして下さいね。
女性の私物を安易に見たら叱られてしまいますよ。
笑声交じりに出て行く博紀さんを見送り、俺はつくねんと部屋に取り残された。
手には小さな茶紙袋。
そして視界の端に見えるのは、御堂先輩の私物と思われる白紙袋。
俺の持っている紙袋よりも大きく取っ手付きときた。
相手のプライバシーを考えると見ない方が良いんだろうけど。
……此処に持ってくる先輩の私物、ねぇ。
好奇心と道徳感を天秤に掛けた俺は前者に重心を掛けてしまい、窓辺の隅に身を潜めている紙袋に抜き足差し足忍び足で歩んだ。
「ちょっとくらいイイっすよね。誰も、いないし」
見ても、見なかったことにして過ごせばいいんだから。
二度三度周囲を確認して紙袋を覗き込む。
一番最初に目に飛び込んできたのはボトル。
取り出してみるとオレンジの香りと表記されている。
もしかしてこれは俺の持っているボトルと同じ種類なのでは?
あ、しかも薬入りって書いてある。……薬?
お次に取り出したのはタオル。
まるで底を隠すように覆われたタオルを手にし、俺は頭上にクエッションマークを浮かべた。
何気ない気持ちで袋の底を一瞥。
「あ、れ」俺は喉の奥を引き攣らせ、おずおずと手を伸ばした。
「赤いロープに蝋燭、筆、洗濯ばさみ……? な、何に使うんだろう? それからえーっと「ガチャ」……ガチャ?」
紙袋を揺するとガチャガチャと音がした。
物を退けて最奥を確認。
直後、
「~~~ッ?!」
声にならない声を上げ、急いで出した物でそれらを隠す。
タオルを綺麗にかぶせ、ボトルまでしっかりと仕舞うと持っている茶紙袋を抱えてトイレに逃げ込んだ。
ゼェゼェと息をつき、扉に背を預けてその場に座り込む。
腰が抜けてしまった。
「な、な、なにあれ! なんだかムッチャ悍ましい物を見てしまったんだけど!」
口で説明しろと言われたら放送禁止用語でピ―――ッが入るだろうし、俺の見たものはすべてモザイク化されるに違いない!
ま、まさかあれを俺に使うつもりなんっすか。
御堂先輩!
ほんっとうに俺のこと、好いてくれているんっすかね!
相手の気持ちを疑いたくなるほど、大変ヨクナイ物を目にした俺はべそを掻いた。
やっぱできないよ父さん母さんっ。
俺、このままだと殺されるよ! 婚約者に殺される!



