「けれどお気持ちは分かりますよ。
私も七瀬さんに可愛いと言われたくて、私服姿になる時は熱心にお洋服を選んでいたものです。可愛いと言われる。
それだけで一女性として見られている気がして。
なんだか認められている気がしません? 私にもチャンスがあるんじゃないか、なんて思っちゃったりして」
あ、ちょっとだけ七瀬さんのことを思うと切なくなっちゃったり。
へこみますよね、好意を寄せている人のダークな一面を知ってしまうと。
「お嬢様はこんな私を女々しいと思いますか?」
問い掛けると、「いや」なんとなく気持ちは分かるから。お嬢様は首を横に振って否定してくれます。
なら、私も否定しましょう。お嬢様は変ではない、と。
「僕も結局は女の子だったのかな。さと子、僕は男の子にはなれない、のかな」
「何故、男の子になりたいのですか?」
その理由には答えず、「もしも」僕が今、本当の意味で“女の子”になったら、豊福は一端の女として見てくれるだろうか。私に問いを重ねてきました。
「可愛いと言われたいのですね」一笑を向けると、「分からない」ただ好きな奴から言われたら、恥ずかしい一方で嬉しいんだろうね。
お嬢様は力なくハニカミを零しました。
「でもね、さと子。僕はやっぱり受け身にはなれない攻め女の子なんだ。僕はあいつの王子でありたいんだよ」
「王子ですか。お姫様じゃなくて?」
「だって僕はあいつを抱きたい女の子なんだ。姫じゃ割に合わないだろ?」
とんでも発言に唖然としてしまいました。
いえ、この方なら言いかねない発言なので、今更驚く私の方がおかしいのかもしれません。
「さと子、僕は王子になりたいよ。願わくば、本物の王子に」
お召し物から目を背けるように瞼を下ろすお嬢様に掛ける言葉が見つかりませんでした。
願わくば、本物の王子に。
お嬢様は何を想って王子に焦がれているのでしょうか?
私には到底、分からないことでした。
王子様に羨望を抱いたことのない、私にとっては到底。



