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【(仮)空の部屋・寝室にて】
(AM11:15)
「やーっべ。ソファーで寝たせいか? 異様に体が重いんだけど」
向かい側で大きな伸びとあくびを零しているイチゴくんが首の関節を鳴らしている。
その表情は気だるそうだ。
彼のみならず、俺も気だるくて仕方がない面をしていると思う。
とにもかくにも体が重いんだ。
ベッドから身を起こすのにも一苦労した。
起床時間は通常よりも随分遅く、博紀さんが起こしてくれなかったら俺はいつまでもベッドの住人と化していたに違いない。
「はぁ…」口から出るのは溜息ばかり。
朝食が用意されているテーブルの上で肘をつき、こめかみを擦る。
嗚呼、現在進行形で体の何処よりも頭が重い。
どうしちゃったんだろう?
頭痛とは一味違う鈍痛を感じるんだけど。
あれこれグルグル考えながら寝たせいかな?
考えすぎて頭がオーバーヒートしている、みたいな?
ありうることだけど、俺はそんなにグルグルと考えていたっけ? 寝落ちるまでの記憶が一切見当たらない。
ショボショボする目を瞬きながら記憶を検索していると、傍らに立っている博紀さんから名前を呼ばれた。
説明されずとも朝食を取るよう促しているんだと思う。
いつもの俺なら出された朝食を残さず食べないと失礼だ! 勿体無い! と、思うところなんだけど、遺憾なことに食欲皆無。
折角おいしそうな朝食が俺を待ち構えてくれているというのに。
ちなみに朝食のメニューはカリカリに焼けているフレンチトースト。
とろとろのスクランブルエッグ。
おなじく卵料理になるココット、ベーコンとほうれん草が入っておいしそうだ。
コーンスープにヨーグルト和えサラダ。
デザートはブランマンジェと呼ばれたミルクプリンのような冷菓。
ブランマンジェはフランス語で「白い食べ物」って意味らしいよ。
語学を教えてくれたロッテンマイヤーさんが雑学で教えてくれた。
気だるさがなかったらがっつくところなのになぁ。
なんだろう、この倦怠感。
またひとつ溜息をつき、俺はオレンジジュースに手を伸ばす。
今、一番胃が受け入れてくれそうなのは果実系だ。
果汁100パーセントであろうオレンジジュースで喉を潤し、朝食は食べられそうにないことを博紀さんに伝える。
「ご気分が優れませんか?」
事務的な質問に体がだるいことを告げる。
鼻で笑われる覚悟で言ったんだけど、意外にも相手は親身に聞いてくれた。
「ご体調の件は考慮しましょう。しかし空さま。何も口にしないのは体に毒です。スープだけでもお召し上がりください」
腐ってもお目付けなんだな。
素の顔を知らなければ感謝しているところだよ、ほんと。
仕方がなしにスープの入った皿を自分の方に引き寄せる。
「ほんっと気だるいよな」
向かい側に座っているイチゴくんもだるいを連呼して、全然食欲が湧かないと溜息をついていた。
うん、既に朝食を半分程度、平らげているみたいだけど……きっとだるいんだろうな。うん。
「空、食い終わったらちょっと外に行こうぜ。外の空気を吸えば気が晴れるかもしれないし」
ぽいっと口に食べかけのフレンチトーストを放って咀嚼しつつ、イチゴくんが提案を出してきた。
返事する前に「駄目だ」お前が勝手に決めるな、とお目付けが意見する。



