その意気込みが余計、大雅の不安を煽るらしい。
瞬く間に彼の表情が曇天模様に変わっていく。
意見しようとしても、「わたくしだって一端の令嬢ですわ」庶民の方々よりも多くのことを手助けできると彼女は胸を張った。
ぐうの音も出ないらしく大雅は渋々と彼女の厚意を受け止め、百合子を同志として迎える。
一刻も早く連絡を耳にしたかった鈴理は、大雅に話してくれるよう促す。
そうだったと言わんばかりに彼は口を開いた。
「兄貴からの伝言だ。鈴理ちゃん、僕達の手で婚約式をぶち壊す。そのためにも必ず、玲ちゃんと会え、だそうな。できれば今日中に」
やけ物騒な伝言である。
「ぶち壊す、か」
それは御堂家の知名度を下げる行為なのでは? 鈴理は躊躇いがちに吐露した。
自分は豊福空が好きだ。
ゆえに婚約式は宜しく思っていない。が、だからと言って直接御堂家をうんぬんするようなことはしたくない。
御堂淳蔵はともかく、御堂玲とはよき好敵手であり友人なのだ。
偽善なことかもしれないが、なるべく玲の家が困るような衝突は避けたい。
「俺もさ。兄貴の発言に度肝を抜いて、聞きなおしたんだ。玲が困るんじゃね? ってさ。そしたら」
「そしたら、なんだ?」
「婚約式どころじゃなくしてみせるから安心してよ、だよ。兄貴は御堂淳蔵がしていたことをそっくりそのまま、行動に起こそうとしているんだ。我が耳を疑ったぜ。一週間以内でできんのかよ」
話を掻い摘んで話しているせいか、理解力が追いついてこない。
数秒間、脳内で整理整頓を心掛けてみる。
そして鈴理は気付いた。気付いてしまった。
楓が起こそうとしているとんでもない行動内容に。
「まさか喰らう、つもりなのか?」
恐々口を開いて大雅と答え合わせ。
できることなら合って欲しくなかったが、大雅が無言で肩を竦めたために理解。
見事に正解を導き出してしまった。
キョトン顔の百合子がどういう意味だと眼を飛ばしてくる。
周囲を見渡して人の確認を取り、共食いをするつもりなのだと返答した。
幾ら電波系隠腐女子でも一端の令嬢である以上、財閥同士で口にする“共食い”の意味は知っている。
彼女は頓狂な声を上げた。
すぐ右手で口元を押さえ、挙動に周辺を確認。
「まことの事ですの?」
声音を窄めて自分たちに尋ねた。
「楓さんが“共食い”を? そんなことをしてしまったら」
「そうだ大雅。あれは“共食い”を食い止めるためのデータ分析。返報するためのものではない筈だ」
「俺に言うなって。俺だって兄貴があんな物騒なことを言うなんざ思いもしなかったんだから」
けどな、兄貴は本気だ。
あいつは言ったんだよ。
『何かを救いたいなら、それだけの度胸と覚悟を備えといて』ってな。
確かに、俺達がしようとしていることは御堂財閥にとってマイナス。
玲のジッちゃんがしようとしていることは、悪意が含まれていれど財閥の糧にはなる。
それを俺達が阻もうとしているんだ。
兄貴の案をするにしろしないにしろ、玲の家に対して困らないことをするって方が難しいかもしれねぇ。
「だから玲に会えつってるのかもな。事を知っているだけも幾分マシな筈だ」
大雅は鼻筋の通った顔をしかめる。



