「大体あいつが不幸なら俺様の方がもーっと不幸じゃねえか! 可愛くねぇ女を娶らないといけねぇし、相手は攻め女だし、人にセクハラしてくる変態だし。なんなら俺がセクハラしてやろうか? ああん?」
ケッと憎まれ口を叩く腐れ縁俺様の演説に唖然。
けれどすぐに笑声が漏れてしまう。
「馬鹿め。あたしの方が不幸だ」
ちーっとも受け男らしくない受け男を娶らないといけないのだから。可愛くないヘソだし。
相手のカッターシャツをたくし上げてヘソとご対面。
「くらぁ!」穢れなき俺様の体に何してやがる! 再びチョップが下ろされたが、片手で受け止めニヤリ。
「何度も食らう馬鹿ではない。今度はあんたが食らえ! 先ほどのチョップは本気だったろう!」
手を振り上げると、「甘ぇ!」お前は身長がないんだよ! 糸も容易く手首を掴まれてしまう。
双方ギリギリと相手を押し合い、力を込め合い、にこにこっとアイコンタクト。
「力は俺の方が上だぜ?」余裕綽々の俺様に、「力だけがすべてではない」受け流すことも大事だと体を右に流す。
「うおっ?!」
頓狂な声を上げる大雅がバランスを崩したところを、その腕で背中を支えた。
これぞ女が男を腕に抱き抱える男女逆転の一光景である(別名残念すぐる胸キュン光景)。
未だに取り合っている手と手を押し合いながら、「参ったか」「ざけんな」青い火花を散らした。
「リード権は俺様にあンだよ、クソ女。さっさとこの体勢を変えないと鳴かすぞ」
「ほぉ。誰が誰を? ヘタレの俺様にあたしを鳴かす度胸があるとは思えないがな」
「テメッ、その口を塞いでやろうかっ。どーもテメェはおイタが過ぎる。躾けてやっから感謝しやがれ」
「その言葉、そっくりそのまま返す。あたしの腕を持ってしてみれば、あんたなんてすぐに受け男の仲間入りだ」
「あ、まだ先輩達いるみたいだ。すみません、竹之内先輩。言い忘れていたんですけど、後で俺にメールで連絡先を教え……、あー…、何してるんですか?」
!!!
ビシッと硬直する俺様あたし様ペアに対し、戻って来た後輩のひとりがぎこちなく指差して二人にクエッション。
彼の背後にいたエビも「あらら」これはどうしたものかと、引き攣り笑い。
「えぇえっと俺達…、お邪魔したみたいですね。まさかお二人がそういう関係まで発展していたなんて思わず……、なんてこったい。二階堂先輩まで餌食に」
「受け男は着々と増殖しつつあるみたいだね。本多」
「ちっ、ちっげぇええ!」
「これは誤解だ!」
「俺様が受け男なわけないだろうが!」「あたしは好きでしているわけではないぞ!」「俺はリード権を持ちたい男だ!」「大雅が攻められそうにしているから相手をしてやっただけで!」「嘘こくんじゃねえ鈴理っ!」「あたしはいつでも正直だ!」
後輩を前に言い訳と喧嘩を始めた二人だったが、フライト兄弟はさぞツッコミたかったことだろう。
まずその体勢をどうにかしろ、と。



