できることは些少かもしれない、だけど“助けて”と言われたことに意味がある。
エビは微かに表情を崩して「何もしないわけにはいかないんです」ね? 本多、と相方に同意を求めた。
ぶっきら棒に返事するアジは「だから」接続詞を口にして二人を見据える。
「俺達は本気であいつのこと助けたい。本気で助けてって言われたから、それに応えたい。先輩達はどうなんですか? あいつのこと、助けてくれるんですか?
あいつが悩んだ末に貴方達を選んだように、あいつのこと、助けてくれるんですか? あいつを助けてもぶっちゃけ、利得は何もないですよ」
憂慮を含む詰問を飛ばしてくるアジが、此方の返答を待っていた。
彼等と同じように三拍ほど間を置き、「利得か」まさかこんなところで聞くとは思わなかったな。
鈴理は重い口を開く。
その表情は幾分、柔らかかった。
「確かにあいつを助けたところで、自分達の財閥に“利得”などない。財閥の本音を言えば、御堂淳蔵を敵に回すほど馬鹿な真似はないだろうな」
「じゃあ教えられませッ、アデ!」
アジの返事に「最後まで聞かんか馬鹿者め」鈴理は相手の頭にチョップをお見舞いする。
まだあたしの演説は終わっていない、口角を持ち上げる。
「財閥の本音を言えば、と前置きをしただろう? あたしの本音はまだ話していない。財閥界だと? “利得”だと? あたしの前で通用するか。
あたしを誰だと思っている。
財閥界など知るか。利得があろうとなかろうと、あたしがあいつを助けるといえば助けるのだ」
あたしはあいつに守られた。それが癪なのだ。
何故ならばあたしはあいつの騎士。
守られるでは立場が逆だ。
誰も望んでいない、男女逆転の逆転など、誰も。
「理由を付け足さなければいけないのであれば、ただひとつ。あたしはあいつを迎えに行かなければいけない。一端の攻め女として」
あんた達が教えてくれないのならば、あたしは今此処で合気道をご披露しよう。
一般的に世間はこれを脅しと言うのだろうが、多少の犠牲は仕方があるまい。
それだけあたしも気が焦っているのだから。
挑発的に笑う鈴理に傍らで聞いていた大雅がよくもまあ、そこまであたし様に振舞える物だとあきれ返っていたが今の彼女には通用しない。
大事なことは情報が得られるかどうかにある。
真顔で演説を聞いていたアジは、「脅しても無意味ですけどね」それで屈する馬鹿じゃありませんよ、と小生意気に返す。
次いでブレザーのポケットから携帯を取り出し、鈴理に放った。
反射的に受け取った彼女に「アドレス帳のは行に入ってますから」俺の気が変わらないうちにさっさと赤外線でデータを取ってください、と指示してくる。
「ありがとう」
一変して表情を和らげる鈴理に信用を置くしかないじゃないですか、とアジ。
「俺の私情があれど、竹之内先輩は空が好きになった人ですよ。……最初から信用していましたよ、本当は最初から」
吐露する彼の眼がほんの一瞬だけ温かくなる。
「素直じゃないんだよね。本多は」
「ちっげぇよ笹野。俺は先輩達を試しただけだ。信用はしておいても、本気で行動を起こしてくれるのかどうか。想いがあっても覚悟がないと意味ねぇだろ?」



