前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―


 

これだから短気なオトナにはなりたくないんだよな。
 
シッシッシと笑声を漏らすイチゴくんは愉快げにコーンスープを啜る。


「んまい」金を掛けたお味だ。これっておかわり自由? 空になった皿を博紀さんに向けるマイペース男に、


「こいつは生粋の疫病神だ」


今日のスケジュールの大半を潰された気分だとお目付けは唸った。


目尻を下げ、俺もイチゴくんが絶賛しているコーンスープを飲むためスプーンを手に取る。

うん、美味しい。
お湯で作る市販のコーンスープの素と何が違うのかイマイチ分からないけど、普通に美味しい。

素直に食事を楽しめるこの気持ちを大切にしたいな。
 
 

楽しい最後の晩餐(になるんじゃないかと思う。明日、淳蔵さんに会うんだし!)を終えた俺は何をするわけでもなく部屋でのらりくらり時間を過ごしていた。

お目付けの御考慮のもと(ここ強調な)、扉の鍵をしっかり掛けられたので部屋に出たくとも出られない。

テレビも娯楽もない部屋でできることなんて限られている。


博紀さんが姿を消した頃合を見計らってイチゴくんは携帯を弄り始めたけど、俺自身は何もする気になれない。携帯もないし。

不安なのかも。
窓辺に立って格子向こうの夜空ばかり眺めている。
 
 
(父さん、母さん)
 
  
脳裏を過ぎるのは両親の姿。

俺の起した行動により、本当の意味で俺達家族はバラバラになるかもしれない。

まだ親孝行も何もしていないのに。

 
今日は新月らしく、夜空には星ばかりが瞬いている。それとも俺の見る位置からじゃ月は見えないのかな。

嗚呼、夜空にぽっかりと浮かんでいる雲は不気味だな。

青空の時に見る雲は真っ白で綺麗なのに、夜空に見える雲はおどろおどろしい姿をしている。

月、星明かりを浴びていないと余計に不気味だ。威圧感がある。
 

「不安か?」


本気でこの部屋に泊まってくれるイチゴくんがソファーから飛び起きて頭部を掻く。


「ぶっちゃけ不安」


弱音を吐き、首を捻って相手に力なく微笑んだ。
ここで虚勢を張っても相手に見抜かれるだろう。

俺は素直に肯定した。

 
「皆が行動を起こしてくれるんだって分かっていても、やっぱり、ね」
 

信じていないわけじゃない。

でも不安は拭えない。何から不安を口にすればいいか分からないほど。
 

「御堂先輩、無茶をしていないといいけど」
 

俺の背後で淳蔵さんが手ぐすねを引いていたと知り、今頃奔走しているに違いない。

ただでさえ仲違いになっているのに……、彼女が口走っていたことも気になる。

これ以上、身内のことで御堂先輩には傷付いて欲しくないんだけどな。
 

彼女の性格を考えれば、七日後の婚約式は受け入れないだろう。

その時、淳蔵さんはどう出るのか。

十中八九、俺をダシにしてきそうで怖い。俺だって両親をダシにされたんだ。可能性は高い。