「バーッカじゃねーの」
それまで傍聴者になっていたイチゴくんがムリムリとナイフとフォークを放り、両手を挙げた。
「できるわけないじゃん」
婚約式を挙げてもお前らに人の人生を管理できるわけがない。
イチゴくんが物申してくる。
真に受けない博紀さんに対し、「そりゃ空は管理されるかもしれないけど」取り巻く周りがそれを黙っているかどうかは別問題じゃね?
にやりと笑い、イチゴくんはテーブルに肘をついた(ロッテンマイヤーさんがいたらマナー違反で指し棒鞭の刑だろう!)。
「御堂がじいちゃんに命令されてはいそうですかって聞く奴か? 周りの人間だって簡単に事を運ばせるような輩じゃないし。
空が望む限り、どんな環境を強いても関わりを断ち切るなんて無理。絶対にムーリ。
少なくとも俺は人に言われて、空と関わることをやめる人間じゃないのでよろぴこ」
冷たい海に落とされた気分だったのに、イチゴくんの言葉によって絶望が希望に変わっていく。
保証はないのに明るい未来が垣間見えた気がするのは友達が傍にいてくれるからだろう。
イチゴくんは約束してくれている。
現実として正しいことを正しいとは言わない、現状に応じて正しいことは正しい。間違いは間違いだと明言すると。
カッコイイよな、惚れちゃうじゃないか。
立場上、博紀さんには意見できず、俺の返答は「分かりました」の一言。
けれど表情は含み笑いで返すことができた。
よって博紀さんからは面白く無さそうな舌打ちを頂く。
相手の思惑に嵌らないって結構気持ちが良いな。
「明日。会長に会って頂きますので」
流れを切るように博紀さんが話題を替えてきた。
俺が返事する前に「マジか!」じゃあ楽しみにしとかなきゃな! とイチゴくんが元気よく返事。
傍らから漂ってくる禍々しいオーラにそろーっと視線を流せば、嗚呼、やっぱり博紀さんが怒気を纏ってらぁ。
「お前が会長に会ってどうするんだ。部外者はとっとと家に帰れ」
「俺は言ってるじゃん。空と一緒に帰るって。空の行くところ、俺も共に行動する。これ決定事項なり」
「空さまは此処に残るんだ。一々説明させるな」
「だーかーら。空と一緒に帰るって言ってるだろ? どーせアンタはイタイケな少年の体目的で? 誘拐したみたいだけど? 俺達はその気もなにもないし。俺は空と帰る。これは完全無欠の決定事項だ! 一々説明させるなって。それとも何か? アンタは俺を帰して空を「殺すぞ!」おおっ、怖い怖い」



