ツッコミどころ満載で何処から話を切り出せばいいか分からない。
取り敢えず野郎との風呂に弁解するなら相手が友達だからっすかね?
婚約者の貴方様と風呂に入るのとは事情が違うんっすよ。
第一若かりし男女がマンツーマンで風呂に入れるわけないでしょーよ。
十中八九、貴方様に食われちまう自信が持てますよ。俺。
「あの」
『大体君は勝手過ぎる』
こんなことをして僕が納得するとでも? 喜ぶとでも? 責め立ててくる御堂先輩に微苦笑を零し、「嫌われる覚悟っす」と返事した。
「すべてを知ってしまったんでしょう? すみません。身勝手なことをしたって自覚はあるんです。
でも言ったでしょ? 貴方は俺の、守りたい人だって。守りたかったんっす、貴方のこと。エゴだって分かっていても」
だって貴方はずっと俺の傍にいてくれた、大切な人だから。
「だけど、そうっすね。できることなら、もう一度……、先輩のこと甘やかしたい、かな」
これはうそつきばっかな俺の嘘偽りない本音。
まさかこんな形で御堂先輩と離れ離れになると思わなかったから。
見た目はビューティフル王子なのに、ふと気の抜いた瞬間に甘えたになる貴方に微笑ましい気持ちを抱くんっすよ。どうしてでしょうね?
三拍ほど間を置き、機具の向こうにいる彼女が告げてくる。
『すまない。君の苦しみに気付いてやれなかった』
と。
詫びるのは身勝手なことを起こした俺の方なのに、彼女は何も悪くないのに、真摯に謝られた。
手に取るように彼女の表情が目に浮かんでしまう。
『君が祖父に無茶を強いられていたことはさと子や鈴理から聞いた。君のことだ。きっと孤独感に苛みながら、結論を出したんじゃないかと思う』
「先輩……」
『安心しろ。君の両親は僕が守る。君の事だってこのままじゃ終わらせない。祖父の思い通りにもさせない。
それこそ鈴理よりも早く救い出すから。鈴理より早く迎えに行くから、だからその時は―――…』
過去を捨てて僕を選んで。
言葉にならない言葉が俺の胸に届いた。
いつだって俺の気持ちを最優先にしてくれていた御堂先輩がらしからぬことを告げてきた。
強引といえばそれまで、だけど三ヶ月勝負の以上の本気が伝わってきた。
嗚呼、この人は本気で俺の事を好いてくれているのだと気付かされる。
……俺のバカヤロウだ。
分かっていたじゃないか、彼女がいつだって本気だということは。本気だということは。
『君が祖父に逆らったのなら、僕もあいつに逆らう』
「な、ナニを言うんっすか!」
『驚くことじゃないだろ? 君と同じ事をするだけだ。
しかしそれには豊福、君の居場所を知りたい。携帯を使えるということは、GPSが使える筈。イチゴに頼んで位置の特定を』
もう混乱してきた。御堂先輩が淳蔵さんに逆らうとか、GPSとかイマイチ分からん機械のこととか、早口で言うから。
もっと説明を聞きたかったけどイチゴくんが前触れもなしに俺の手から携帯を叩いた。
水没してしまう携帯を見送ることはできない。
風呂の表面が泡で覆われているから。
瞠目してイチゴくんに視線を流すと、「シッ」音が聞こえる、人差し指を立ててきた。
確かに耳を済ませるとプラチック製の曇りガラスの向こうから音が聞こえてくる。足音だ。博紀さんが戻って来たのかもしれない。
いや戻ってきたのだろう。
そして俺達がいないことに気付き、早足でこっちに向かっているに違いない。音のテンポが速い。
嗚呼どうしよう、どうしよう、どうしよう。弁解を考えなければ。
さすがに高校男子二人で風呂に入っているなんて意味深だろ! いや変な意味じゃなくってさ!



