「俺も空も今んとこ無事だよ。
あー、監禁はされてっけど『はぁああナニしてんねんお前!』だから怒鳴るなって! これは俺のせいじゃねえし。
でも今さ、すっげぇんだぜ!
監禁されながらも俺と空は泡風呂をエンジョイしてるんだ! すげくね?」
さっきから思うけど泡風呂の自慢は必要なのだろうか?
この自慢のせいで若干相手を混乱に貶めている気がしてならないのだけれど。
案の定、トロくんも混乱したようで何がどうなって今どうなっているのかちゃんと説明してくるよう強要した。
一方で向こうの状況も教えてくれる。
今、トロくんはさと子ちゃんと一緒に御堂先輩の車にいるらしい。
そして御堂先輩は淳蔵さん宅に乗り込んでいるとか。
ある程度予想できた事態だけど、やっぱり御堂先輩……淳蔵さんの家に。
彼女の身が心配になった。何事もないといいんだけど。
「御堂は大丈夫なのか? うん…、メールで今、戻ってくるように? 俺もそれがいいと思う。空と御堂は一度話すべきだと思うからさ。
え、激怒していた?
……おい空、御堂、激怒しているって」
う゛っ。
やっぱ電話を貰った時、会話するべきだったかな。
約束していたもんな、何か遭ったら必ず報告するって。
約束を破っちゃったから余計に怒らせたと思う。
ということは、鈴理先輩も怒ってるよな。
電話を貰った時、俺、電話には出たけど会話は一切しなかったから。
二人の攻め女を怒らせた現実にビビッていると、イチゴくんの声のトーンが変わった。
「御堂おひさ」
なーんておどけた声で挨拶している。
俺は風呂の中に潜りたくなった。
お得意のエスケープを発動させたくなった。
ぶくぶく、ぶくぶく、ぶくぶく。
口元を水面下に沈ませ、風呂にあぶくを作っていると肘で小突かれる。
視線を持ち上げれば、すーっげぇ楽しそうな顔を作っているイチゴくんの姿が。
嗚呼、表情で分かる。
御堂先輩の怒りの度合いが。
泡のひげを拭い、おずおずと携帯を受け取った。
意を決して「先輩っすか?」と声を掛けると、
『ようやくちゃんとした声を聞かせたな。このうそつきめ』
盛大な舌打ちを鳴らされた。
『君って男はどうしてそうもうそつきなんだい。人との約束は破る。黙って家は出て行く。挙句の果てには野郎と風呂に入っている、だと?
どういう了見だ豊福!
僕の時は一緒に入ってくれなかったじゃないか!
おかげで僕は覗きという強硬手段を取らなければならなくなったんだぞ。イチゴがよくて僕が駄目な理由を三十文字以内で述べてみろ!』
お、お、怒られている内容が何かズレている!
俺は風呂という他愛もない理由で相手を怒らせてるの? ねえ?!
……それと覗きはやめて下さい。犯罪っす。



