メールを読み終えるとイチゴくんは電話を掛け始めた。
さと子ちゃん、もしくはトロくんに掛けていると思ったんだけど、物の見事に俺の予想は外れてしまう。
イチゴくんが電話を掛けたのは、
「あ。悪い、アジ。今大丈夫か? エビと一緒? 丁度いいや!」
まさかのアジくんだった。
驚愕する俺の傍で、イチゴくんは空いた手で角だっている泡を握りつぶしながら早口で喋る。
「ごめん。突然だけどちょっと頼まれてくれ。明日朝一に空の元カノとコンタクトを取って欲しいんだ。
うん、うん、そう。その竹之内って奴にさ。事情はメールで送る。マジ今の俺達やべぇんだって。監禁されてる。いやまじで。
……無事か? おう、無事だから俺と空は入浴中。
すげぇんだぜ、泡風呂だ! ウラヤマシーだろ! ……え、なに? 話の節々がイミフ? 空とかわれ?」
なんだよ、自慢しているのに。
不貞腐れるイチゴくんが俺に携帯を手渡してくる。
なんとなくイチゴくんの心意は読めていた。
彼はきっと淳蔵さんの目の届いていないであろうアジくんに行動を起こしてもらおうとしているんだ。
淳蔵さんって財閥内じゃ特に情報網が広いからな。
庶民のアジくんに連絡の仲介を取ってもらおうって寸法だろう。
「空。ちゃんと伝えろよ」
伝えないと何も始まらない、イチゴくんの背中を押してくれる台詞。
そして携帯を受け取った俺は開口一番に伝える。
「アジくん。俺、御堂家に逆らった」
と。
フライト兄弟には普段の学院生活である程度の事情は話している。
ゆえにこの台詞だけでどういう事態か把握したに違いない。
大丈夫なのかとアジくんに心配された。
正直大丈夫じゃない。
逆らったばかりに見知らぬ部屋に幽閉されているんだから。
それでもこうして入浴できているし、一応無事といえば無事なのかも。
俺はアジくんに迷惑承知で頼んだ。手を貸して欲しい、その旨を。
当たり前だと返された時はどんな表情を作ればいいか分からなかった。
言葉にすれば、こんなにも簡単に救済の手が差し伸べられる。
皆の優しさに泣きそうになった。
時に自分からどうして欲しいのか言わないといけないことってあるんだな。
電話を切った俺はイチゴくんにそれを返す。
「言えば届くもんだろ?」
軽い口振りと一緒に茶々を入れられた。決まり悪くなるけど、甘んじて受け止めようと思う。これは俺の中の今日の教訓だから。
アジくんに連絡を入れた後は、メールの返信だ。
放置プレイされていたトロくんにメールで無事なことを返事する。
数分も立たずメールが返ってきた。
一分一秒電話をしたいらしく、今電話をしても大丈夫かという文面がディスプレイに表示される。
そこでイチゴくんがトロくんに電話をすると、
『お前今までナニしとったんや―――ッ!』
俺にまで聞こえる怒声が機具からけたたましく放たれた。
携帯と距離を置くイチゴくんは連絡が遅れて悪かったよ、と相手に謝罪する。



