「財閥の関係を決壊させるわけにもいかない。御堂先輩と鈴理先輩達のっ、仲を壊したくもない。
……本当は両親を不幸にしたくなかった。しあわせにしたかった。俺だって自分の未来をたいせつにしたかった……。
どうしてだろうっ、イチゴくん…俺、どうしてこんなことに」
抑えられていた感情が爆ぜ、赤裸々に自分の気持ちを吐露する。
情けないと思われたかもしれない。
無様だと思われたかもしれない。
身勝手と思われたかもしれない。
構わなかった。
ただ誰にも言えなかった心情を聞いてもらえる、それでよかった。
贅沢を言えるのならイチゴくんに正しかったと言って欲しかった。
正しい、その一言で俺は救われる。
興奮しているせいか、込み上げてくる酸いが喉を引き攣らせる。
必死に嚥下して掴んでいた胸倉から手を放す。ごめん、取り乱した。そう付け加えて。
けれど手は放せなかった。
放す前にイチゴくんが俺の片手首を引っ掴んできたから。
握り締めてくる握力の強さに目を瞠る。
「お前。やっぱ馬鹿じゃん」
相手と視線を交える前に先手を打たれた。
「空。俺とお前は他人だ。もっと言えばお前の両親とお前も別個の生き物だ。誰もお前のすべてを理解することはできない。誰にだって。
今、俺が何を思ってお前に発言しているか、空には分からないだろ? 俺だって空がどんな思いで俺の言葉を聞いているのか分かりやしない」
痛烈な言葉とは裏腹に彼の表情は穏やかだった。
「俺はな、空。今、お前のことを本当に馬鹿だなって思いながら喋ってるよ。なんでだと思う? 空が誰にも言わず独断で物事を決めたからだ」
そりゃお前にはお前の苦悩とやらがあっただろうさ。随分思い悩んで出した結果なんだなって理解も出来る。
でもさ、本当にお前はその二択しか選べなかったのか?
お目付けが始終お前を見張っていたかもしれないけど、他人に相談できる手段は沢山あったんじゃないか? 筆談でもいいし、手紙でもいい。
御堂や親に相談できなくとも学校の連中は? 俺は? 友達は?
お前には二択以外の選択肢、絶対にあったんだと思う。
視野が狭くなってお前は見つけられなかったんじゃないか?
……べつに責めているわけじゃない。
ただ話を聞いてもどかしくなったんだ。
本当に誰にも頼れなかったのか? ってさ。
逆の立場になってみろよ。
お前はそれでいいかもしれないけど、やっぱヤだぜ? 相談されなかった側からしてみれば。
お前の判断とやらもさ、空視点から言えばきっと正しい。
それは言ってやるさ。正しいよ。
でも俺視点から言えば、それは間違った選択肢だ。
御堂とか元カノとかジョーダンじゃねえぞバカヤロウ! とか思ってるに違いないぜ? 事情を知ったら親も心配するんじゃねえの?
「相談したところで未来は変わらなかったかもしれない。
でもさ、御堂達は一言、たった一言、お前に言って欲しかったんだと思う。
俺も言って欲しかった。いや言わないと分からない。
お前の気持ちはお前自身が俺達に伝えないと何も届かない。このままじゃこれで終わる」
「言って欲しかった…?」



