どれほどそうしていたのだろう。
ふと開かずの、んにゃ開けられずの扉から鍵の開閉音が聞こえた。
瞼を持ち上げた俺は整理はつかなかったな、と苦笑し、仰向けになる。
右の手の甲を額に当て宙を見つめていると、扉が開かれた。
視線を流すのも怖かったけど、逃げていても結果は一緒だろうから意を決して視線を扉側へ。
入って来た人間は予測的中。
俺を此処に連行してきた博紀さんだった、ん、だけど、なんだか妙に疲労している様子。覇気がない。
おっかしいな。
俺が気絶する前は余裕綽々、人を鼻で笑っていたお方なのに。
心中でその姿に嬉々を感じる俺って性悪?
いえいえ、此方に非があるとはいえ暴行を振るったお方ですので、当然俺は彼の疲労にガッツポーズを取ります。
俺もできた人間ではないので!
深い溜息をついて前髪を掻き上げる博紀さんは、鋭い眼光をこっちに飛ばす。
一変、にっこりと微笑んできた。
「お目覚めのようですね空さま。どうですか? ご気分は」
お、お、おのれはっ。
人を気絶させておいて何をいけしゃあしゃあとッ、ご気分? サイッコーに最悪っす。鳩尾がまーだ痛いっす。気絶させる意味あったんっすか?
毒を吐きたくてしょうがなかったけど、博紀さんに変な言葉を返せば何をされるか分からない(首絞めとか首絞めとか首絞めとか!)。
上体を起こした俺は普通だと素っ気無く返事する。
それよりも此処は何処なのか、率直な疑問をぶつけた。
連行された身分とはいえ、場所を知る権利くらいはあると思う。
「お気に召してくれると嬉しいです」
斜め上の返答をする博紀さんは素敵な部屋でしょう? と一室を見渡した。
テレビこそないものの、必要最低限の家具や部屋は此処に揃っている。
十二分に生活していけると彼は笑みを深めた。
綻ぶことによってできるえくぼが彼の表情を際立たせている。
「此処が今しばらく貴方のお部屋になります。どうぞお寛ぎ下さい。後ほどお食事を運んできますので」
俺の部屋、この一室が?
それはそれは本当に素敵な部屋だ。真新しいベッドや机、クローゼットには衣服。廊下に出ずともトイレや浴室はこの部屋に設置されている。
快適極まりない。
もっとも廊下に出られない現状と鉄窓さえなかったらの話だけど。
まんま幽閉されている気分になる。
一見監視カメラは設置されていないようだけど油断はできない。
「結局、此処は何処なんですか?」
まだ返答を貰っていない。
教えてくれるよう催促すると、「此処は空さまのお部屋です」同じ答えが返ってきた。なるほど、教えてくれないわけね。
分かりました、分かりましたよ。もう聞きません。
此処は俺の部屋になるんっすね。
まず一つ解決しました。
じゃあ次の問題。
俺はこれからどうなるんっすか? 博紀さんに視線を留める。
タダで済むとは思っていない。
借金を背負っている身分で御堂家に逆らったんだ。
博紀さんも懲罰を口にしていたし、これから先のことが気になる。
ビクビクしながら罰を言い渡されるまで一刻を過ごすより、今この場で包み隠さず判決を言い渡して欲しい。きっと博紀さんなら知っている筈だ。
恐怖心がないといえば嘘になるけれど、先に聞いていた方が気も楽になる。



