「今超ホームシックだよ、もう。おうちに帰りたい」
ネガティブ発言に反応したかのように腹の虫が鳴き始める。
空腹のせいで余計ネガティブ感に駆られる俺はやってられないと吐息をつき、ごろんと横になって目が覚めた時と同じ姿勢を作る。
床に放置されていた毛布を拾って腹に掛けると頭の上で腕を組み、初対面の天井と睨めっこしましょのあっぷっぷ。
遺憾なことに勝負はつかないだろう。
無感情な相手は俺を冷然と見下ろし、俺はを能面に相手を見つめ、見つめ、みつめ続けているのだから。
手持ち無沙汰になったおかげさまで脳裏に過ぎるのは、傷付けてしまった人達のことばかり。
元カノの鈴理先輩。婚約者の御堂先輩。愛育してくれた両親。元カノの婚約者、大雅先輩。俺を最低と呼ばせてしまったさと子ちゃん。
出し始めたら切りがない。
まず誰に謝ればいいのだろう。
被害は最小限だったとしても、俺は誰かを傷付けた。
それが怖い。
誰かの未来を変える行為も怖いけれど、誰かを傷付けてしまう行為もまた怖い。臆病者なんだろうな、俺。
毛布を肩まで引き上げ、背もたれ側に寝返りを打つ。
苦渋の末に選んだ選択。他に道はなかった。だからこれで良かったのだと何度も自分に言い聞かせる。
なのに、どうしてだろう、おかしい。
言い聞かせる都度、不安に煽られるんだ。
言い聞かせる度に偽善だの独善だの身勝手だの、自分の行為を罵る第二の自分がいる。自己暗示は意味を成さない。
嗚呼、俺は誰かに自分の判断は正しかったのだと言ってもらいたいのかもしれない。
でなければなんのために俺はこの選択肢を選んだのか、なんのために悩み苦悩して選んだのか、その理由すら迷子になってしまうから。
どうしようもない孤独感に駆られた。
押し殺すように毛布に潜水するんだけど、一向に孤独は消えてくれない。
渦巻く感情と罪悪がいつまでも俺の中で暴動を起こしている。
制圧しようと躍起になればなるほど孤独感と目前の現状に打ちひしがれてしまう。
(先輩―――…)
心中で呼んだセンパイの名前は果たしてどちらなのか、俺にすら見当がつかない。ただ孤独感が俺に名を呼ばせた。
現実逃避のように瞼を下ろし、現状から目を背ける。
まだひとりでいられるこの時間、せめてこの時間に整理をつけたい。心の整理を。



