全体を見通してもシンプルすぎる部屋だ。
必要最低限の物しか置かれていない。
「俺が寝ていたソファーにベッド。向こうには掛け時計。テレビはなくって……」
俺はおもむろにクローゼットに歩んでそっと開く。
そこにはスーツと数枚のカッターシャツ、バスローブ、それから俺のブレザーが掛けられていた。
ここで俺は自分がブレザーを着ていないことに気付く。
誰かが脱がせてくれたんだろう。
クローゼットを閉めて窓辺に足先を向ける。
カーテンレースが掛かった向こう側は夕日色に化粧された庭らしき場所が顔を出した。
とはいえ、見えるのは名も知らない草木ばかり。
庭なのかどうか判断しづらいところだ。
幸いなことにこの部屋は一階にあるらしい。
安堵する一方で、窓と外界の間に鉄格子が阻んでいる現実に目を細めてしまう。
鉄窓、ね。
まるで俺の見張りをしているかのように外界を遮断している。
無機質の見張り番ってところかな。
腕は通ってもそれ以上は外に出られないようだ。
場所を移動する。
の部屋には三枚の扉があるんだけど、内二枚はトイレと浴室に繋がる扉。
最後は多分廊下に繋がる扉だと思われる。
なんで多分かというと扉が開かなかったんだ。
鍵穴に鍵を挿し込んで開閉するタイプの扉は、鍵を持っていない俺を外へは出してくれない。
おとなしく部屋にいろと命令しているかのようにすら思える。
下におろして開けるタイプのドアノブを上下に動かしてみるけど、ちっとも動かなかった。
トイレや浴室には窓はなかったし、俺は完全に部屋に閉じ込められているらしい。
一頻り部屋を探索した俺は元居たソファーに腰を下ろし、今後の事を考え始めた。
淳蔵さんに逆らったのだから、それなりの罰は甘んじるつもりだ。
博紀さんも懲罰がうんたらどうたら言っていたし、俺の行為を許してくれる慈悲はないと思う。
でもどんな罰を受けるんだろう?
それが俺の胃を緊張させる。
“貴方はもう豊福家に帰れませんよ”
―――…それって俺が二度と両親に会えないってことなのかな。
脳内でリピートされる博紀さんの言葉を反芻。
究極にネガティブになってしまった。
くっそう、両親至上主義を舐めるなよ。
そんなこと言われてな、ヘコまない俺がいると思っているのか?!
ベッコベコにヘコむよ!
俺は父さん母さんラブだもん!
ファザコンマザコン言われても仕方ないってくらいラブだよ!
何より親孝行したい人達なんだよ畜生!



