「―――…っ、ハッ……。はぁ…、はぁ…、俺の体っ、無事? あ、無事だ。じゃ、じゃあ今のは夢、ゆめか」
がばりと飛び起きた俺は、ゼェハァ息をついて毛布を捲ると自分の安否を確認。
エッチした形跡は?
拘束された痕は?
お薬を使われた感じは?
うん、大丈夫、今日も素晴らしい童貞としての一日を送れているようだ。
童貞を死守するわけではないけれど、やっぱ、覚悟もないのに童貞サライの空にさよなら、なんてのは無理だべ。
合意と覚悟の上であらやだおよよをしたい俺の切なる気持ち。
確認した俺は一気に脱力。
「良かった」手の甲で汗を拭い、再びソファーに沈んだ。
恐ろしい夢を見たよ。
悪魔二匹が俺を襲いにきた悪夢。
噴き出る汗の量がパねぇ。
ふーっと息をついて天井を見つめる。
妙に高級感溢れる天井は俺を見下していた。
瞬きを繰り返して瞼を閉じる。
間を置いて、俺はくわっと開眼。
「何処だよ此処!」
大慌てでソファーから下りようとしたら転げ落ちた。
ケツと腰を強打して身悶えてしまうけど、触り心地の良い絨毯が痛みを緩和してくれた、ような気がする。あくまで気持ちだけど。
「アイデデ。腰とケツが……、ついでに鳩尾も痛い。なんでっ」
確か俺は実親の思い出に浸るために隣町の公園に足を運んで……、そこで博紀さんと会ったんだよな。
博紀さんってば、めっちゃ性格の悪い男だったんだよ。
女性の心をつかみそうな優しい笑顔を作っていたくせに、実際さと子ちゃんの心を奪っていたくせに、素顔がバリバリの腹黒S男。
人の首を絞めたり、宝物を蹴り飛ばそうとしたり、挙句の果てに人の鳩尾を突いてきたり。
白黒のギャップに泣きたくなるっつーの。隠れ魔王か!
「あ」
そこで俺は自分が気絶してしまったのだと気付かされる。
その場に座り込んで、じんわり痛む鳩尾を擦りながら周囲をぐるり。
俺が寝ていたソファーが背後に、右手には真新しいシングルベッドが、左手にはシンプルなデザインの机がある。
机上に置かれている鞄を見るや俺は血相を変えてそれに駆け寄った。
急いでチャックを開けて中に入れているお守りがあるかどうかを確認する。
手中に二枚の写真立てがおさまり、俺はホッと息をついた。捨てられてはいなかったようだ。
大事なお守りを見つめ、軽く頬を崩す俺だったけど、すぐに思考を周囲に向ける。



