「大事なのはさと子ちゃんがこれからどないするかや。
豊福かてさと子ちゃんと不仲は嫌と思うで。
信じられへんやったと後悔するなら、今から信じたらええ。仲直りしたかったら、仲直りできるよう行動すればええ。
お互いに気持ちを伝え合えばええやん。
きっと豊福にも気持ちは伝わるはずやで。
大丈夫やて、さと子ちゃんならできる。元気出しぃ。
近々ある体育祭、豊福達と見に来てくれるゆーたやん。皆で来たらええよ」
そう言って励ましてくれるトロは、笑ってくれるさと子ちゃんじゃないと攻めて欲しい気分にならないと照れくさそうに笑った。
節々の台詞に訂正を入れたいものの、真っ直ぐな彼の言葉に此方も照れくさい気持ちになってしまう。
そうだ、彼の言うとおり、これからだ。
疑ってしまった事実は変えられない。
なら疑ってしまった分、行動で示そう。
ウジウジしたって仕方がないのだ。
嗚呼、なんだか気持ち的に楽になった。
自分が今、何をすべきなのか見えてきた気がする。
「ありがとうございます」
さと子は彼に礼を告げた。
おかげで立ち直る契機が掴めた。
励ましてくれた彼には感謝したい。
「トロさんのこと、ちょっと見直しちゃいました。優しいんですね」
途端にパァッと明るくなるトロは軽く手遊びをして、「さと子ちゃんが元気になったんなら」なったんなら、と意味深な視線を飛ばしてくる。
非常に嫌な予感が胸を過ぎった。
話題をかえなければ自分自身にダメージが飛んでくるような。
本能的に危機を感じたが、少しばかり遅かった。
「元気なったなら体にキスマークつけてや!」
キャー! 言ってもうた! オレって大胆やわ!
両手で顔を隠す乙女、否、乙男(オツオトコ)にさと子はビシッと硬直。
やっぱりこの人とはオトモダチになれないかもしれない。
後ずさるさと子に対し、「遠慮せんでええんやで!」もろ手を挙げて相手が突進してきた。
当然さと子は悲鳴を上げて逃げる。
自称誘い受け男としてアタックするトロに、さと子はうぇーんと声を上げた。
「攻めてぇな!」
ハートを散らして追い駆けてくるトロから全力で逃げるさと子はお断りだと絶叫。
「なんでなん! オレの色気が足りひんの?」
「そういう問題じゃないです! 私は攻め女の子じゃないんですよ!
そ、そんな破廉恥なことできるわけないです! キャーッ、来ないで下さいぃいいい!」
「ならタックルで最初は我慢するわ」めげないトロの猪突猛進っぷりにさと子は半泣きで玲の背に隠れる。
玲を盾にしつつ、彼女に助けを求めると視線を流してきた某プリンセスが一笑。
「攻め女は食らう姿勢が基本だぞ、さと子」
ギャー! この人は味方じゃなくて敵でした!
わなわなと青褪めながら震えるさと子を余所に、トロはどうやったら食われたくなる男になれるのだろうかと思案している。
「男の子は攻めるものですよ!」さと子が物申せば、「それが常識とは思わへん!」豊福だって受け男やないか、トロは握り拳を作って熱弁する。



