蘭子にこれでどうにか相手を特定できないかと尋ねた。
携帯を手に取った蘭子は車の全体像とナンバープレートの画像を一見。
暫しそれを見た後、「まさか」心当たりがあるのか、自分の携帯機を取り出して何処かに連絡を取り始めた。
詳細を聞きたいところだが、今は邪魔しない方が良いだろう。
玲は空を仰いで目を眇めた。
自分が男ならこんな事態にならなかったのだろうか。
もっと守れる力があったのだろうか。
女だからこそ得た関係がある。
それでも強く思い焦がれてしまう。
男だったら守れる力があったのではないか、と。
土壇場で好きな男に守られてしまった不甲斐なさ。遣る瀬無さ。どうしようもなさが自分を苛立たせる。
女は男を守れないのだろうか?
この場に彼がいたら、それは違うと否定してくれるだろう。
男には男だけの、女には女だけの守る方法がある。
そう言って慰めてくれるだろう。
けれど彼はいない。
否定の声はない。
男だったら良かったという言葉にすら、否定の声がない。
彼は傍にいない。
(こんなにも動揺してしまうなんて。僕はいつの間に、彼を……、いつの間に。まだあいつから密かに好意を寄せられている鈴理にムキになったほど、僕は)
「キスしたいな」
無性にキスがしたい。抱擁して口付けを交し合いたい。
玲は目を伏せて、相手のぬくもりを思い出そうとしたが、何故だろう、これっぽっちも思い出せなかった。昨日まで傍にいたのに。



