あいつはマジ何してんねーん!
叫びたくなるトロを余所に、彼は一生懸命座席を倒して開放型トランクスペースに身を捻り込んだ。
後は何食わぬ顔で座席を元に戻して、座席後ろに身を隠す。
そうしている内にあの青年が戻って来て運転席へ。
やばいと焦っていると、自分の携帯にメールが入った。内容は『やばかったらメールするから警察呼んでっちょ』だった。
いや気付け、今も十二分にやばいで自分!
滝のように汗を流していると、SUV型の車にエンジンが掛かった。
ぎゃー!
豊福もろとも花畑も連れてかれる!
内心で悲鳴を上げている間にも車は発進。
歩道に乗り上げていた車を車道に戻して颯爽と走り去って行ったという。
取り残された自分は馬鹿なことを起こした輩に待機組だと任命され、此処らをうろついているのだとトロは溜息をついた。
「あいつ。物事を楽観的に考える傾向があるんや。六感が疼くとかワケ分からんことゆうて……、しかもオレ、此処に取り残されたら困るんや。
全然違う地区に住んどるのに、此処らはまるで土地勘ゼロやで。
ただでさえ方向音痴やさかい、おなじところをぐーるぐるして。警察に言うべきかどうかもわからへんし」
「じゃあ、花畑は…、イチゴは…、豊福と?」
「引き連れて来るの一点張りやったからな。一緒やと「大手柄だぞトロ!」うわっち?!!」
感極まった玲は相手を抱き上げると、その場で回って抱擁した。
相手が男だとかそんなもの関係ない。玲はイチゴとトロに感謝したかった。
こんな偶然があるのだろうか!
「あかん胸やっば」抱擁された感触と女性に抱かれた現実に赤面するトロ。
そんな彼の心情など露一つ知る由の無い玲は助かった。
本当に助かったと両肩を掴んだ。
「イチゴに連絡を取ってくれ。居場所をっ、豊福の居場所を知りたいんだ」
「あ、ああぁ、それはかまへんけど電話は無理やで。メールなら可能やと思うけど。
あ、さと子ちゃんもメアド知ってたな。さと子ちゃんからもメールしてやってみて。
せや、んーっと、一応な。
車のナンバープレートを写メしてたんやけど使えるか? 警察沙汰になった時のためのアイテムなんやけど」
ほんまに誘拐やったら怖かったし。
そう言って彼は携帯の画像フォルダから、車の全体像とナンバープレートの画像を呼び出す。
携帯を手渡してくれるトロに、「君は良い受け男になるよ」僕が保証する、ウィンクして一笑した。
傍でさと子がそれはちょっと、と遠目を作っているのは余談にしておく。
そう、彼の攻め女対象はあくまでさと子なのだから。



