「豊福が故意的に放置したか。或いは、第三者に……、限りなく後者に近いな。
豊福は基本的に物を捨てきれないタイプだ。携帯は高価だから相手に返す。それがあいつの考えそうなこと。他には何も?」
「ございません。これらのみが落ちていました」
第三者の仕業ならばGPS機能を見越していたとなる。
だとしたら策士だ。
祖父の命による使いなら、それくらい当然見越して動きそうである。
玲はスマホを取って着信履歴を確かめる。
最後に電話を取ったのは5時15分、今から三十分前の話だ。
三十分前には此処にいたのだろうか?
顔を顰めて佇んでいると、「お嬢様」さと子に声を掛けられた。
「ジジイのところに行くのが手っ取り早いかもしれない」
アポなしでは近寄ることすら無理だが、玲はだめもとでやってみるしかない、と彼のスマホを握り締める。
両親に相談するべきではないかと助言を受けたが、その時間すら惜しい。
形振り構っていられないのだ。
踵返すと、塗装された金属アーチが集っている公園の出入り口に向かう。
祖父が動く前に此方が動いて目論見を阻止しなければ。
「まーた此処に出てもうたで。なんやねん、ここら一帯。
って……、そこにいるのはもしかして。あ、やっぱさと子ちゃんや! さと子ちゃーん! ほいでもって御堂はん!」
おーい、背後から声が飛んできたため玲は足を止めて振り返る。
傍らにいるさと子は聞き覚える声にギクリと身を震わせていたが、向こうはお構いなしのようだ。
こんなところで会えるなんて運命やわ、そんな台詞を笑顔に込め、彼はもろ手あげてくる。
さと子は悲鳴なき悲鳴を上げていた。
そう、現れたのは先日知り合った所沢 緑のことトロである。
誘い受け男になると意気込んでいた、あの残念男子高生、トロである。
「さと子ちゃーん、元気しとったか! オレのカラダ、攻めてええよ!」
「いやぁあああ! 来ないで下さいぃいい!」
大慌てで玲の背後に隠れるさと子に、「照れるなんてかわええな!」もっと攻められたくなるわぁ、頬を崩すトロはノッケから変態発言。
身の毛を総立ちにさせるさと子がガタブルブルと体を震わせ、身長の高い玲をグイグイと盾にする。
双方に視線を流して軽い溜息をつく玲は、「君か」今僕達は忙しいんだが、とさと子に対して助け舟を出す。
実際に自分達は時間に追われている身の上。
トロの相手をしている場合ではない。
するとデレデレっとしていたトロが一変、「せやアンタには聞きたいんや」やや慌てた様子を見せた。
「アンタ、豊福の婚約者やったよな? 豊福、今、家出でもしとるんかいな?」
「え、どういうことだいトロ。豊福を知っているのかい! 僕達は今、豊福を捜しているんだ!」
今度は玲が表情を変える番だった。
ボリボリと後頭部を掻くトロは「この公園で見たんや」と肩を竦める。



