何故かというと、数メートル先に人が立っていたから。
真っ直ぐ俺を見つめてくる学ラン姿の男装女性、御堂先輩だ。
なんでこんなところにいるんだろう?
お手洗い?
でも雰囲気的になんか違うっぽいし。
じゃあ何してるんだろう? 謎い人だ。
「御堂先輩じゃないっすか」
俺は彼女に話し掛けて歩む。
推測を立てても俺の中で答えは出ないって分かっていたから、直接相手に何をしているのか訊ねることにした。
そっちの方が手っ取り早いしな。
彼女はちょっと間を置いて返答する。
会場を抜け出す俺を見つけたから、追い駆けて来たのだと。
なるほど、俺を追い駆けて来たんだ。なるなる…、え?
俺はカチンと固まって、「追い駆けて来たんっすか?」再度質問。
頷く御堂先輩は追い駆けて来たけれど、声を掛ける機会がなかなか見つけられなくて、ずっと突っ立っていたんだと。
いや、それなら早く声を掛けて下さいよっ、声掛けしても俺、怒らないっすよ!
男嫌いの貴方様と違って、誰でもフレンドリーに受け入れてますから!
というか…、なんで俺を追い駆けて…?
「どうしたんっすか? 俺に何か用でも?」
「用がないと君を追い駆けてはいけないかい?」
いや、そういうことは一抹も言ってないっすけど…、でも普通に考えてそう思うでしょう。
俺と御堂先輩の仲って非常に浅いものだしさ。
寧ろ、今日初めましての関係なんだから、そりゃあ俺に用事がある以外に追い駆けて来るなんて到底考えられないんだけど。
イマイチ心情が見えなくて首を捻っちまう。御堂先輩は何を考えて俺を追い駆け…、え゛?
ガッチーンと固まったのはこの直後。
ぎこちなく御堂先輩を見つめる俺は、「何してるんっすか」わなわな体を震わせ、声を振り絞って相手にクエッション。
ふうむと顎に指を絡める御堂先輩は、右の手で俺の腰をお触りお触り。
まるで鈴理先輩のするようなことをするもんだから、俺はプチパニックに陥った。
「ちょぉおおおお!」
彼女の手を払って、ズザザザザザッと壁際に避難する俺は何をするのだと声音を強くする。



