「あっちゃー、まじぃな。玲の奴、かなり入れ込んでやがった。らしくねぇ。早くあいつの熱を冷まさないと暴走するかもしれねぇぞ。って、おい、鈴理?」
一方、正門に取り残された鈴理はその場で体を微動していた。
「どうした?」
ふるふると震えている自分に気付いた大雅が声を掛けてくる。
もしかして口論になったことに対しショックを受けているのか? 微妙に気遣われてしまったが、そうではない。
ショックなど二の次、三の次、四の次。
今一番に思うことはひとつ。
「あいつはあたしを舐めているのかッ。空のことが好きだと?
そんなもの百も千も知っているわ! 改めてあたしに言ってどうするッ…、ええい、あたしに向かって、さも自分が一番好きかのように発言しよってッ。
腹立たしい! あたしの方が好きに決まっているではないか!」
「おーい、鈴理。頼むからテメェまで熱くならないでくれよ。可哀想になるのは誰でもねぇ俺様だから」
「喧しい」鼻を鳴らして憤る鈴理だが、一方で好敵手のらしからぬ動揺っぷり、自分に対する発言に複雑な念を抱く。
緊急事態になればなるほど冷静沈着に物事を見ようとする彼女だが、今回の彼女はいつもの彼女ではない。
感情のまま奔走しているように見えた。
それだけ今回の事件にショックを隠し切れなかったのだろう。
執着しているようにすら見えた彼女の発言に、玲の恋心の本気を覚(さと)ってしまう。
並行して玲の祖父に対する懸念も強まった。
財閥の常識として“御堂淳蔵”を筆頭とする財閥界のトップ、五財盟主に歯向かってはならないと暗黙のルールがある。
それは鈴理も認知していた。
が、ここまでだったとは。玲が取り乱すほどだ。底知れぬ権力者なのだろう。
なにせ自分たちの取り扱っていたデータを奪うよう指示したご老人なのだ。情報網の広さには舌を巻いてしまう。
「しかし参ったな。空が玲の下からいなくなっているとはっ……、あいつは変なところで積極的に行動をするからな。
おとなしく玲の下にいてくれたら良かったのだが。考えが甘かったか」
「事情を察するに、豊福は口止めされていたんだろうよ。玲が事を知れば必ず止めに入っていただろうからな。あいつには借金ってデッカイ枷があるし。
豊福の奴、その気になればデータだって奪えただろうに……、できなかったんだな。どうしても。
やっべぇ、ダチのことでこんなに心配するのは久しぶりだ。お前等が誘拐された以来だぜ、この気持ち」



