「僕は豊福が好きだ。誰よりも好きだ。男になりたいと思う僕を理解してくれているあいつも、照れているあいつも、甘やかしてかしてくれるあいつも、全部好きなんだ。いつの間にか、本当になくてはならない大切な人になっていたんだ」
「玲……、あんた」
「あいつは馬鹿だ。逆らえばどうなるか分かっていたくせに、両親至上主義のくせに、これからの両親の立ち位置よりも僕の未来を取るなんて。
僕はッ、こんな形で守られたくなかった。こんな形で……っ、鈴理、君にだって譲らないし負けない」
「阿呆か! それこそ冷静を欠いている証拠だ! 今は勝ち負けうんぬんかんぬん言っている場合じゃないだろ! あ、待て玲!」
好敵手の脇をすり抜け、玲は正門を潜った。
蘭子とさと子が大慌てで追って来るが振り返る余裕はない。
どうしてこうなってしまった。
“貴方は女性として生まれて良かったんっす。女性は強いですよ、男なんかよりもずっと”
昨日まで隣に居てくれたのに。
“え、膝枕? 眠いんっすか? しょーがないっすね”
甘やかしてくれたのに。
“あ、また髪を濡らしたまま上がってきて。ったくもう、ちゃんちゃんするっす”
わっしゃわっしゃと髪を撫でてくれたのに。
“貴方は俺にとって守りたい人。必ず守ります。必ず”
「豊福っ…」
再会したら絶対抱いてやるからな、あと七日で勝負の勝敗もついたんだ。
待ってて欲しい。
今すぐ迎えに行くから。
彼女よりも先に迎えに行くから、だから無事でいて。
「これ以上、ジジイの思い通りにはさせない。絶対に」



