前略、肉食お嬢様②―カノジョな俺は婿養子―



とはいえ、やっぱ落ち込むよなぁ。
 

だって、にんげんだもの!

上辺であろうがなんだろうが和気藹々と他の財閥さん方と談笑している美男美女許婚を目の当たりにしたらぁ、そりゃあアータ、普通貧乏くんだってなぁ、普通貧乏くんだってなぁっ!


俺のハートだってそんなに強くないんだっ、落ち込む時は落ち込むんだぞっ!


別にこの顔を恨むわけじゃないけど、向こうの美貌にはちょい恨み節を唱えたくなるというかなんというかっ、美男美女なんて畜生と思っちまうというかっ、…こんなことを思う俺って超心狭ッ!
 

嗚呼、だけどホンット神様もいけずだよなっ。

財力はともかくなんで容姿でピラミッド層を作ったんだろっ…、おかげでこんなにも苦労する俺がいるじゃんかよ。

ただでさえ財力で身分差を感じるっつーのに、容姿にまで差をつけられたら、俺、先輩と何で釣り合えばいいのやら。
 

はぁ。口から漏れる小さな吐息が空気と溶け合う。

いっそのことごちゃごちゃと考えている俺の気持ちも溶け消えたらいいのになぁ。


感情を持つ人間って単純なようで複雑な生き物だからメンドクサイ。



会場に戻る気も起きず、力なく長椅子に凭れ続けてどれくらい経っただろう。 



満ちる静寂の中、ロビーの一角でひたすら宙を見つめていた俺はそろそろ戻るか、と気持ちを持ち直し、ゆっくりと腰を上げる。


いつまでも感傷的に落ち込んでもしょうがないしな。

悲観的になっても一緒だ。

 
鈴理先輩や大雅先輩の気持ちは知ってるし、大雅先輩に比べたら俺はまだまだ恵まれている方だ。

彼は意中相手に気持ちを伝えられず(伝えようともせずかな?)、ただお兄さんと宇津木先輩の関係を見守ってるんだから。

同じ恋をしている身の上として思う、大雅先輩の立場はスンゲェ辛いって。

俺が彼の立場だったら、あんな風に二人を見守れるだろうか?



……絶対に無理だと思う。



俺様ミートロール男子のくせに大雅先輩って、オトナな面があるんだな。敬服するよ。ん?
 

会場に爪先を向けた俺の足が自然と止まる。