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―――…いいね、豊福くん。
これは君が本当に玲の婚約者として相応しいかどうか見極めるための試験でもあるんだ。
生半可な気持ちで財閥界に足を突っ込めば、必ず不遜な輩につけ込まれる。
そんな弱肉強食の世界だ。
君の学力は既に家庭教師を通して理解しているし、そこはクリアしている。後は君の心の強度を見極めたい。
何度も言うようだけど、君の行動一つで運命は変わる。
君のご両親がどうなるか、よく考えておきなさい。
そして憶えておきなさい、君の代替は沢山いる。
学校を終えた俺は重たい鞄を肩にからい、迎えの車に気付かない振りをして、ひとり、ある場所に向かっていた。
滅多に使うことのないバスに乗車し、三十分ほど揺られて隣町へ。
中途半端に栄えた町に降り立つと早足で住宅街を突き進み、まだ記憶に新しい寂れた公園に足を踏み入れる。
誰もいない公園。
小さな滑り台と砂場。
タイヤの渡り道にペンキが剥げ掛けているシーソー。
木造のベンチ。
俺が落っこちてしまった小柄なジャングルジム。
柵向こうには、殆ど使われていないであろう電話ボックスが寂しそうに人を待っている。
嗚呼、いつ来ても良くも悪くも思い出ある公園だ。
ジャングルジムから見える道路の向こうで、俺の両親は事故に遭い、亡き人となった。
ふうっと溜息をつくと近場のブランコに腰掛けた。
錆びたブランコの鎖からは悲鳴が上がる。
それを無視してブランコを前後に揺らす俺は、ただひたすらに淳蔵さんの放った言葉を反芻していた。
「逆らっちゃったな。命令、一つも守れなかった。口ではちゃんと守るっていつも言っていたのに。
だいたい浮気男になるなんて、ヘタレ男の俺には無理だったんだよ」
昼ドラde悪役キャラにはなれなかった。
俺は何処までいってもヘタレ受け身キャラしか演じられなかった。
だけどさ、あの聡い御堂先輩や鈴理先輩、周囲の皆には俺のうそつきな気持ちを気付かせなかったんだ。
演技力はかなりあると思うよ。
やっべ、この機に演劇部に入ろうかな。
早速入部届けを取りに行かないと! ……冗談だけど!



