「彼は確か両親至上主義だったよね。それでどうにか。可哀想だけど、こうなった以上こっちも手を打つ」
早めに手を打った方がいい。
その言葉に鈴理はまさか、と腰を上げる。
「ま。待って下さい」
まだそのUSBメモリが本当にウィルス入りだと決まったわけじゃない。
自分の物かもしれないと元カレを擁護する。
それにヘタレな彼が大層な真似なんぞできっこない。
それは一番自分が知っている。
……だけど肉体関係を求めてきたのは、求めてきたのは。
“これは御堂財閥のためっす。
でなければ、こんな行動は起こしませんよ。貴方は竹之内財閥の三女、繋がっておけば必ず利益になります。
だったらどんな手を使ってでも俺は貴方と繋がりを持とうと思いまして。
ふふっ、すみません。俺ってどーしょうもなく卑怯な男なんで、貴方の気持ちも利用させてもらうんですよ”
“貴方の望んでいたこと、全部してあげるっす。どんなことでもしてあげるっす。バードキスも、ディープキスも、セックスも。体なら幾らだってあげられるっす”
“だからこそつけ込まれるんっすよ。俺みたいなダーメな男に。
同情心を煽ったり、貴方の気持ちを利用したりしてモノにしようとしているんっすから。気を付けた方が良いっす。貴方は優しすぎる。
……勝負、どうぞ負けて下さいね。破談は貴方の自由です。
けど一人の男を迎えに行くのは時間の無駄っす”
握り拳を作ると鈴理は楓からUSBメモリを奪い、片方のUSBメモリを荒々しく自分のパソコンにそれを挿し込んだ。
「なっ!」声を上げる楓は何をしているのだと慌てた。
ウィルス入りだったらパソコンのデータが破壊される、否、パソコンの情報が流出してしまう!
しかし鈴理はお構いなしにUSBメモリの中身を確認。
片方がからっぽなのを確認した後、もう片方を確認するためにUSBメモリを挿し込んだ。
「す、鈴理ちゃん!」
「兄貴。心配してくれてるのはありがてぇけど、豊福バカの鈴理は誰にも止められねぇよ。なんかあったら俺等が責任とっから」
「そういう問題じゃないよ! もしも情報が流出したり、データが破壊されたら」
「わーってる。不味いってことなんざ。
けど、俺だってダチを信じてぇんだよ。兄貴より俺等の方が遥かに豊福を知っているんだぜ? 余計信じられねぇよ」
あいつってあれでも俺よりカッコイイことをしてのける男なんだぜ。
この俺様のお墨付きだとおどける大雅に楓が困惑する。
一方でUSBメモリの中身を確認していた鈴理は、その手を止め、呆然としてしまう。
USBメモリにはワードの文書がひとつ保存されているだけだった。
それを開けば、はじめの一行に。
>>ごめんなさい。セックスしたいはうそぴょんです。貴方のデータを狙っていました。本当にごめんなさい。大雅先輩とお幸せに。



